Loudéac | ルデアック | 782km |
Illifaut | イフォー | 816km |
Tinténiac | タンテニアック | 867km |
Fougères | フジェール | 921km |
Villaines la Juhel | ヴィレンヌ・ラ・ジュエル | 1009km |
3:49
今日も腹ポさんの声で目覚めた。しっかり眠り込んでいたけど、ん〜ちょっと寝たりない感があるなぁ。
起き抜けの朝食は持って来たゴハン。TOPVALUのものだが”サトウのごはん”同様にレンジでチン!又はお湯で温めるというもの。
洗面所の温水をZip袋に満たしてその中に15分ほど入れて置いて少し温まるんではないかともくろんで食べてみたが...
固いご飯にふりかけ
全く戻っておらずかなりカッチカチな状態のゴハン。それでも我慢して食べる、というより口に入れて噛んで飲み込む。この作戦は失敗だ。
後で聞いたところ、そのままでも食べられる柔らかいパックご飯もあるらしい。こういうことも事前にやっておかないと本番で痛い目に遭うということだな。
別に持って来ていたおやつの『むらすずめ』、他の人もそれぞれに朝食を食べていたので売れず、フロントバッグへ入れて補給食に。おかきはそのままドロップバッグの中へ戻っていった。
ライトの電池はまだ持ちそうだけど予備を持って来てあるのでここで二灯とも新品に交換しておいた。GPSも電池を変えておく。
天気予報からこれ以降雨の心配もない様だ。荷物軽量化のためレインウエアの下だけでも百均モノに変えた。
ウエアはNOZAKIチームジャージに上下とも着替え、ゴールはこれで迎えることにする。ビブショーツだからトイレには向かないが...。インナーは昨日と同じくCRAFT PROZERO半袖に着替えてアームウォーマを装着。タイツは今月新たに購入したCW-Xのスタビライクスをここでデビュー。
トイレも済ませる。
しょっちゅう座っているので少しずつしか出ない。が、体が異変に対応して再びダメージのないように小出しにしている様でもあるので出血の方は大丈夫だった。。。
さあ行こう。少し眠たいけど。
夜道に走り出す。
4:39
快調に走り出したと思ったのも束の間・・・
1時間もしないうちにすぐに眠気は拡大して完全に支配されてしまった。またもや一人ちぎれてしまい、再び一日目と同じ様な感覚で今度は実際にはいない前を走るランドヌールの幻影が見えていたりする。アスファルトから落ちて土の上を走っては戻ったり。
スピードは15km/hくらいまで落ちてケイデンスは50以下。
5:38
危険を感じて停車して休む。フロントバッグに残っていたパンかなにか食べたり、お茶を飲んだり。
(5:48-5:56)
少しましになったかと走り始めてもすぐに眠気は戻ってくる。このままではやばいな、大きくタイムロスすると次のPCで時間切れもあり得る。もうダメだ、どうしようかと朦朧としていると誰かが手を振っているのが見えた。オフィシャルのウエアの様だ。誘導している?ん??ああ...
シークレットポイント。
そういえばここに張ってある『Benvienue Cotes-d'Armor(ようこそコートダルモールへ)』と書かれた横断幕を往路で見た覚えがある。ああなるほど、ここが帰りのシークレットというわけなのか。
よろよろとそちらに入って行って自転車から降りてチェックを貰いに行く。壁際に自転車を立てかけたところで九州のまっきさんと会って『もう眠たい』とか何とか言葉を交わした。
ボランティアスタッフにスタンプを貰い、ステッカーとボールペンも貰った。
ちょっとすねてるジュニアボランティア。退屈なところ、めるしー。
軽食のメニュー表が壁に貼ってある。なんだか破れているな。
あまり思考が回らなくて決められなくてとりあえずスープしるぶぷれ。
6:15
あまりおいしいものではない、というかまずいんだけども、ゆっくり飲んでみるとこの温かさが体にしみこんでいく。飲み終わる頃にはだいぶ目が覚めてきた。”さあ行こうか”という意欲が沸いて来たみたい、そんな魔法のスープは1ユーロ。
スープ、6:16
レストラン出口でMuAuanさんに会った。道を外れて木にぶつかったかでホイールを曲げたといい、なんとか応急処置をしたというその前輪を見せてもらったがかなりブレブレ。スタッフからニップル回しを借りていたので直してみるそうな。メカニックがいるのはタンテニアック、48km先だからそこまで行ければなんとかなるのでは。
6:20
元気を出してここIllifaut(イフォー)のシークレットPCを出発、再びコースに戻りさあ走ろう。(6:08-6:25)
うっすらと空に色がついてくる。
6:51
明るくなって来たら眠気は収まる、そう念じていればそうなるものだ。
雲が多いのであまり明るくはならないけど。
どんよりとした爽やかさに欠ける朝、気温も下がっているがインナーにCRAFTの冬用を着てきたからどうってことはない。
7:01
Saint-Méen-le-Grand(サン=メアン=ル=グラン)の街に入ってきた。左手にお城の様な建物、これはホテルらしい。
(photo by MARIO)
(photo by AJ静岡)
ライティングがとても綺麗、夜の暗い時と夜明けの薄明るい時それぞれに違う表情が美しい。
そこから10kmほどで往路のシークレットPCだったケディヤックに到着。補給ポイントとして開かれているが今度は必要ないので、オフィシャルにコントロールチェックがないことを確認した上でそのまま通過。通過できるだけ元気になってきたということだ。
緩い上り坂で特殊車両に追いついた!
7:13
途中のPCで見かけたストリームライナーが走っている。やぁ、これが実際に走っているところは見たかったのだ。興味津々に後ろをついていく。緩い登りなので妙に遅い。ゴロゴロとボディに走行音が反響しているのを聞きながらゆっくり走る。
登りが終わって緩い下りに入るとスーッと加速していく。おお!今度は速い速い。そしてとてもスムーズな走りでレールの上を滑るように進んで行く様はリニアモーターカーの実験車両さながら。。
下り終わってまた登りになったら今度はブレーキをかけた!ではなくて失速が激しい。ブレーキをかけたのはこちら。大した勾配じゃないのにかなり速度が落ちて、さっきのリニアモーターカーから一転今度は芋虫。黄色いボディが柔らかくなっているんじゃないかと思うほど芋虫(笑)。
リニアモーターカーに戻る前に芋虫をパスして先へ進む。
やっと東の空に赤みが差して来た。パリへ向かっているのだから東、日の出づる方角へ向かっているわけだ。
前を走っているのは背中にカナダ国旗を背負っている人。こうやって自分はどこの国の人間だということをアピールしている人はたくさんいた。日の丸をつけている日本人ももちろんいる。自分も日の丸つけておけば良かったな。
7:26
そしてここにもいました『ブルベぬいぐるみ同盟』、楽しそうなおばちゃん。ハンドルにいろいろくっつけてます。だからぬいぐるみもいいけどキューシートなりGPSはいいのですかと。
バイクはしれっとWレバーのクロモリのコルナゴであったりする。インナーギアがでかい。
7:39
地平線の向こうの端は雲が切れていて朝焼けが薄いオレンジの線になっている。日本では見たことがない、素晴らしい眺め。忘れがたいPBPの風景の一つ。
7:48
朝焼けの空から足下に目を移すと、道端の草むらでは行き倒れのランドヌールをちょくちょく見るようになってくる。
仮眠中、7:52
一旦通り過ぎてから後ろを向いて撮影したもの。
別に危険な場所ではないけれど、こういう草むらは明るいうちはそうでもないが夜の暗い時には用を足している人が多いので雨でなくて濡れているかもしれないことに注意した方がいい。
8:08
また町に入って来た。ここはちゃんとした歩道が備わっている。街灯一つ見てもセンスあるなぁ。
8:18
向こうの空は明るいのだけれどまだなかなか辿り着かない。前を走っているのは反射ベストからして日本人だ。
8:33
コントロールにまっすぐ行ってブルベカードにチェックを受ける。
奥のホワイトボードに『ABANDONS(リタイア)』リストが書かれていて日本人の名前があるのを見つける、が心当たりはなし。
(Photo by 水色KLEIN)
ここのレストランはわりと充実している様に見えた。来た時も同じはずだが記憶にない。
先に辿り着いて食事をしていた腹ポさん達と合流できて隣に座る。
パスタにはまた牛の煮込みが乗っているがその肉は結構大きかった。
食事、8:51
パスタは相変わらずふにゃっふにゃの茹で過ぎだけど、その肉はとても柔らかくて美味しかった。
赤い人参は気が進まないけど、これでも摂らないと野菜が足りない。
(photo by 腹ポ)
普段人参嫌いを吹聴しているのでそれを食べたもんだから皆にからかわれつつ完食。
まぁここはマシな方だがPCの食事はイマイチなことには衆目一致。行きの飛行機で機内食の方がPCの食事よりずっとおいしいと言っていたM脇さんの言葉は間違いなかった。外のレストランなりBarなりで食べる方が時間が少々かかっても正解だろう。
レストランの入口にメカニックがあった。右の女性のだろうか、Wilierを修理中。
メカニック
(MuAuanさんのホイールも直るだろうか。)
PCにはそれぞれメカニックがあって修理や補修部品販売をやっている。チューブやタイヤも売っているしホイールやはたまたフレームまで置いてあるが買えるのだろうか?オルカの完成車が置いてあるけど。
展示してあるオルカ
というわけでここはオルベアが幅を利かせているらしい。
駐輪場の柵に貼ってある青いテープがオルベア。
9:31
ここで今回のPBPで最も有名になる自転車があった。1920年代のプジョーらしい。
ただディスプレイで置いてあるのかと思ったらしっかりゼッケンがついている。シングルギアだとかそういうこと以前に...言葉を失ってしまうほど。
さて、ここで一同揃ってタンテニアックを出た。(8:30-9:41)
空は明るく晴れて来た。
ルート上で一カ所線路を渡るところがある。そこで運悪く遮断機が降りて待たされることになった。
10:19
いや、電車が見られたから運が良かった?(笑)
青空の中快適なライドが続く。GoProHDカメラのハウジングの中でちょっと結露があるみたいでレンズ中央部分がやや曇っていた。
10:34
一人のアメリカ人女性がべりさんに声を掛けてきた。
『You're strong! very good!!...etc.』 べりさんのライドをほめていて、そして何か話しかけてる。かなりのベテランライダーの様だ。
英会話中?
しばらく二人で会話しながら走っていたその様子を腹ポさんと後ろから伺う。
こんな風に外国の人と会話するのはPBPの醍醐味。もっともこの女性はかなりフランクで、その後も色んな人に話しかけてるのを見た。
この辺りでPBP全般を撮影しているW氏が写真撮影していた。
揃って走っている貴重なカットになった。
11:02
前から見える装備もよく写っている。ヘルメット後部にくっついているのはGoProHDのヘルメットマウントで後ろ向き撮影用だ。
このように天気はよくなって快走、ペースはじわじわ上がっていき目の前に現れるグループを次々追い越して行く。必死で後ろを着いて行くが小グループを抜き際にほんの少しタイミングを待ったら間隔が空いてしまい、その後の緩い登りで着いて行けずにちぎれてしまった。追いつこうとするが限界。
ペダルを緩めて呼吸を整えつつ自分のペースに戻す。すぐに皆が見えなくなってしまう。
っと、さっき抜いたグループにも先行されてしまった。これはどうもバツが悪い。
知らぬ間に失速していると気づいたときにはもう眠気に襲われていた。こんな天気のいい日中に眠たくなるだと!
スピードはどんどん落ちて行きこれはもう走り続けてはいられない状態、どこかよいところはないかと探しつつ進む。
仮眠場所付近
また一人ランドヌールに交わされて、、、ん、さっき見えた左手に見えたベンチがいいな、と通り過ぎたところを戻ってそのベンチに横たわりメットを日除け代わりに被って目を瞑った。
11:56
ヘルメットの穴から見えるフランスの空は青かった。
何か気配がしてむくりと起き上がる。フェンスの向こうに牛が近づいてきていた。ピンクフロイドのジャケット写真にこんなのがあったかなぁ。
11:57
そこは道路横の駐車スペースの奥にあったベンチ。画像の左端に少し茶色が見えているのがそれだ。
11:58
駐車スペースは何のためかというとそれはたぶん、隣にあるお墓のため。上の画像で一人に抜かれるところの左手、少し高く作ってあるので道路からはあまりよく見えないが、十字架があるのはわかった。
Googleのストリートビューで見るとよくわかる。この時点ではベンチはまだなかったみたいだが、黄色い矢印のある場所。
真昼なせいか亡霊もドラキュラも出なかったのは幸いである。
長く休んでいた気がしたが実は大して寝ていない。完全にすっきりしているのではないが幾分楽になったので、いや楽になったと思い込むのが肝要だ、さあ先へ急ごう。(11:46-11:59)
教会の尖塔が青空に映える。やっぱり晴れている方が景色いいに決まっているな。
この教会の横を通り抜ける時にちょうど鐘が鳴り響くのが聞こえた。昼12時の時報だったろうか。
12:02
牛はあちこちで見かけるのでコースの半分は牧場の中を通っているのではないかと思うほど。こちらは白と焦げ茶の牛。
牛
城壁
行きにきた時は小雨まじりだったので眺めは今の方がずっといい。
石畳の向こうは店が建ち並んでいて観光客で賑わっていた。
少し進むとまた違う風景が目に飛び込む。『Jardin du val Nancon (ナンソン渓谷の庭)』 12:32
庭と丘の向こうの建物の構図が見事。
さっくりと写真撮影だけの観光を済ませたら市街地の道を抜けてPCへ辿り着き、コントロールでチェックを終える。ここでの貯金は2時間、一つ前のタンテニアックでの貯金とほぼ同じなのはそこまでの休憩が長かったからだ。
Teramuraさんに再会して記念撮影を一つ。
コントロール前(photo by Hiraku Teramura)
他のPCでも見かけたかと思うがここで見たTITANFLEXのバイク。この人がオーナーなんだろうか?やたら貫禄がある体型にフレームは大丈夫なのかと秘かに思う。
(photo by 水色KLEIN)
再び待っていてくれた一行に合流、ここでは食事は取らずに先へ進む事に。(12:40-12:50)
緩いアップダウンを軽快に駆け抜けて行く。
水色KLEINさんが先頭を牽いて他のグループを追い抜いて行く。と、下りにかかったところで今抜いたグループがガシガシ漕いで抜き返していった。敢えてここで追うことはないと見送る。
下りが終わると上りになる。すると追いかけてるほどではないけどまたそのアメリカ人グループに追いついて抜き返す。上り終わって下りに入るとまたまたガシガシ漕いで抜き返される。
日米決戦の始まり。
アチラはとにかく下り命の様だ。そして下りでついた勢いで上っていくのだが普通ならその勢いを保つ様に漕いでできるだけ失速を先延ばしにするのが当たり前と思うのだが、そのアメリカ人達は下りでついた勢いで上りにかかるとペダルを止めて惰性で走り、少しでも休む様にしているらしい。惰性で登って速度が完全に登坂スピードと同じになるまでペダルを停めていた。こちらが15km/hで登るところをアチラは11km/h、こちらが35km/hで下るところをアチラは40km/hオーバー。
メンバーはアメリカチームも3、4人だったかで一名女性が入っているので同じ様な布陣なのがよけい火に油を注いだかも。
たぶん互いに『変なヤツラだな』と思いながら数度バトルを繰り返す。やがて上りが長いところにさしかかって勝負はついたらしく、戦いは終わった。
本当に速い人はもう先の方へ進んでしまっているのだろう、周りを走っている人よりはペースがいいのでその後も一人また一人とかわして先へ進んでいく。
13:29
また小さな町に入って来た。角に他のランドヌールも休憩しているらしいBarを見つけたのでそこで何か食べていこう。店の看板にある通り、『Saint Ellier du Maine(サン・テリエ・デュ・メーヌ)』という町。
Bar 13:36(Photo by 水色KLEIN)
偶然にもゆば〜ばさんが往路で写真を撮っていたところだった。
(Photo by ゆば〜ば)
店内
テーブルの方には表に停めてあったバイクのオーナーらしきランドヌールのおじさんおばさんが食事中、もちろんワイン?も飲んでいる??
ここで頼んだバケットのサンドイッチ、チーズとジャンボン(ハム)をはさんでもらった。
昼食
こってりとナイフで塗り付けられていたのはバターだったかはたまたクリームチーズだったか?ちょっと思い出せないが、バターのこってりしたしつこい感じの印象がない。
パンの表面がパリンパリンでかぶりつくと細かい破片が飛び散って足下に散らかりまくり、あ〜あみっともない。中はしっとりふわっとしていてとても美味しいサンドだった。PBP期間中で一番おいしい食事だったかもしれない。
パンが大きかったので頼まなかったけど、タルトもクリームソースをかけてくれたりして実に美味しそうだった。
さあお腹いっぱいになったから元気よく出発!(13:39-14:25)
・・・ガラガラガラ・・・
しまった!ワイヤーロックをしていたのを忘れてそのまま走り出してしまった。
伸びたワイヤーがスプロケに絡まっている。
ロックを解除して引っ張り出そうとしてもビクともしない。落ち着け、まずホイールを外すんだ。
なんだなんだと見送ってくれていた人達が集まってくる。
ワイヤーの絡み具合を確認して、スポークとローギアの間に絡んだワイヤーを、見ていた内の一人が手を貸してくれて引張りだしてくれた!
そしてあとはスルスルとほどいて復帰。別の人が油を拭き取れるウエスを出してくれる。いやもうありがたいやら申し訳ないやら。
(photo by Hiraku teramura)
おかげで復活。走り出す前に何かお礼をとポーチの中から作っておいた折り鶴を渡した。すると手伝ってくれた人はそれを知っていて自分でも作った事があるという。でもとても喜んでくれた。
『めるしー、ありがとう。』
『ARIGATO!』
あぁ!ありがとうは知っていてくれたんだ。
走り出すと手を振って見送ってくれた。(14:25-14:39)
さあ遅れたからのんびり走ってもいられない。急げ!
しばらく進むと皆止まって待っていてくれた。つまんないトラブルですいません。こういうのはメカトラとは言えない。
(photo by Hiraku Teramura)
この時はBarで脱いでいた反射ベストを着るのも忘れて走っていた(※日中は着なくてもよい)。偶然にも白黒基調のNOZAKIジャージとバックの牛達の構図はぴったりだ。
後ろからやって来た3人のうちの一番後ろにレイさん、快調なケイデンスですいすいと走って行く。声をかけるのが精一杯でついて行くことができないで見送ってしまった。
右手の広場の奥、何人か草むらに寝転んでいる人が見えた。あそこまで奥に入っていると大丈夫だろう。フラフラとそちらへ入り込み、少し離れたところで横になった。
仮眠中
ここでも果たして眠れたのかどうか。たぶん眠れてはいない。
10分ばかし止まっていただけだから。さっきの休憩といいまことに効率の悪いこと、どうせ止まるならしっかり休めばいいのだがそれが苦手。頭のどこかに急がねばならないという意識があるのだろう。
自転車を起こして車道まで押して出る。
手書きのPBPの応援幕に後を押されるようにサドルにまたがって走り始めた。
(15:25-15:35)
走るスピードは23km/hくらいか、この速度では先に行った仲間に追いつけるものではなくむしろ離れるくらいだろう。かといってペースアップできる余力はないのであきらめて淡々と走る。
緩い下り坂、遠くまで見渡せる雄大さは何度見ても晴れ晴れとした気持ちになる。
(photo by 水色KLEIN)
道端に止まっている人がいる。埼玉ジャージの日本人だ。
何かな?と思って止まってみると
何やらこのお父さん、参加者がどこ(の国)から来たかを世界地図に記しているらしい。
一人新たに来たのが同じ日本からだったのでちょっと反応が薄かったみたい。
ハーモニカを持っていてささっと『歓喜の歌』を演奏してくれた。
一緒の若者もお父さん同様に楽しんでいるのだろうか。それにしてもこういう応援の仕方もあるんだな。
ここで出会ったmario君としばらく一緒に走った。こうやって色々取材しながらPBPを楽しんでいるmario君、もちろん走る方に余裕があればこそ。
16:15
『ここで写真撮っていきますから。』
と橋を渡る手前でお別れ。
16:18
ここは橋の両側から川岸にかけて花が飾られていて、対岸の丘の上にも家が並んでいておとぎ話の世界のような風景。
(photo by MARIO)
(photo by MARIO)
レストランのオープンテラスもあって休憩しているランドヌールも多かった。
ここはAmbrières-les-Vallées(アンブリエール・レ・ヴァレー)、もちろん往路も通っているがその時はさすがに止まらずに通り過ぎていた。
止まって写真撮っていたら声をかけられた。Teramuraさんだ。
(べりさん達が)なかなか来ないと言うので
『もうだいぶ先に通過しているはずですよ』
と言ったらカフェでのんびりしているうちに見逃したか!と残念そう。
では先に行きますと別れて走り出す。
青空の下、緩い下りを地平線に向かって進んで行く。どこまでもこの道が続いて行って欲しいという気持ちになる、素晴らしい道。
(photo by 水色KLEIN)
次の町への緩い登りでパニアバッグ装備に抜かされる。
荷物が多いときにはパニアバッグにというのがあちらではごく一般的な様だ。そういえば去年は近畿のベテランM&Mコンビがパニアバッグ装備で走っていたのを思い出す。
17:16
横断する道路が広いので一旦停止する場所。この恰幅のいいお父さんは誘導員だったかな?
右側にこちらに進むとミスコースだと示す×印プレートが見える。
17:27
少し進んでロータリー脇には旗で飾られた家。
フランス国旗以外は地方の旗だろうか。
また道端で仮眠しているリカンベントの人発見。おや?この旗印は...ブレスト手前で会ったtake3さん。
同じカテゴリー90時間だけどスペシャルバイクだからスタート時間は早かったはず、まだいいのかな?
こちらはリアキャリアに泥よけ装備の女性、足はSPDサンダルだ。SPDサンダルは初めてみたなぁ、この季節なら濡れても平気なサンダルが雨には強い。
ルーフジェールという町の中にあった楽しいディスプレイの5人乗り! チェーンがかかっているところを見るとこれは実際に走れた自転車みたい。サンタさんが乗っているところはサドルじゃないけど(笑)。
5人乗り、18:04
18:22
ここは特に賑やかな気がする。
サポートに来ている人も多い様だ。
雲もあるけど気持ちよい青空。
コントロールでチェックを受けるとキーホルダーをくれた。LEDが内蔵されているもの。
レストランで待っていてくれた皆と再会、かなり長い時間待たせていたのにすみませんの一言が言えずとんちんかんなことを口走ってしまう。
さてここでもトイレに長居をする。仮設トイレがずらっと並んでいるのだけどこの簡易トイレが奇妙で便器がなくて床に足を置く場所がありまんなか辺りがへこんで排泄口があるだけ。プラスチックなので滑らないように気をつけてしゃがむ。今はビブを履いているので肩ひもを外す手間もよけいにかかる。
トイレに行ってる間にはぐれてしまったのでしばらく待つかと芝生の上に転がって一休み。
首からぶら下げているポーチからブルベカードを取り出して眺めてみたり。
ブルベカード
いつもの単色印刷のものではなくて、カラー印刷のゴージャスなカードだ。
(往路分のスタンプ)
あと2つ、いや3つでおしまいか。
芝生の上で座り込んでいるときに思い立ってロキソニンを飲む。あと200kmだから膝の痛みを引っ込めるために。ここまでは連続服用で効き目がなくなるのを恐れて飲まずにいた。ここまで来たらその心配はないので服用した。果たして効果は・・・。
出発前にメカニックに寄ってポンプを借りようとした。そしたらメカニックの兄ちゃんが『6bar? 7bar?』と訊いてくるので『セブン』と答えるとポンプを押して両輪とも7気圧までエアを入れてくれた。
『20Euro. Hahahaha, joke,joke!』
にニッコリ答えて『めるしー』。
結局その後も合流し損ない、皆は先に行ったのだろうと勘違いして実はこちらが先に出てしまう失態。(18:21-19:08)
今はどうか?それはここで止める理由はない、ただそれだけかもしれない。
距離は既に1000km。これまで2回1000kmのブルベを走ったが、ゴール後はもう全く自転車の乗る気力が残っていなかった。だからそれに200km加わるPBPの1200kmを数字以上に難しく感じていた。
過去にだって1000kmや1100km地点でリタイヤしたという人の話も聞いている。
けれどもこれからの夕方スタート200km、朝に出るより難易度が高いことは今までのブルベでも経験済みだ。
まだ油断はならない。
でも最後の夜だ。
眠い。けど時間はしっかりある。
ポジティブなこと、ネガティブなこと、様々な思いが頭の中をぐるぐる巡りながらも未知の距離へと走り出した。