epilogue:まとめ

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▽費用

PBPにかかった費用を整理しておきましょう。通貨レート:115円/€で計算。
但し円⇆EUR換金はその時のレートによる実金額。

項目金額:EUR金額:円
ACP申込プリエントリーフィー30€3,450円
エントリーフィー110-30=80€9,200円
オフィシャルジャージ30€x413,800円
反射ベスト20€2,300円
追加DVD10€1,150円
AJバンダナ10€1,150円
キュリー財団寄付10€1,150円
小計280€32,200円
日通旅行近畿ツアー(燃料サーチャージ・空港税含む)274,000円
海外旅行保険(共栄火災海上保険,高千穂保険事務所)11,030円
AJドロップバッグ4,800円
AJ懇親会 (8/25)5,000円
自転車宅配(空港ゆうパック※本来は使用不可1,870円
自転車宅配(ABC大型)4,190円
関空旅費:往路(ベイシャトル経由)7,250円
関空旅費:復路(JR特急はるか経由)7,500円
関空:軽食240円
ドバイ空港往路:PAUL CAFE37AED800円
シャルルドゴール空港:喫茶5.1€576円
ドバイ空港復路:Mcdonald39AED836円
現金8/18換金114.47円/€500€57,235円
8/28再換金107.55円/€-90€-9,679円
残り硬貨
再換金不可分
-4€-460円
小計:現地消費額406€47,556円
   参考:お土産等使用内訳
お土産:マルシェ(11€)(1,265円)
お土産:プチカジノ(4.05€)(465円)
お土産:シャルルドゴール(56.7€)(6,520円)
携帯通信費通話730円
Cメール1,700円
Eメール300円
パケット2,212円
小計4,942円
PBP専用に
準備したもの
リチウム単三電池30本5,600円
リチウムCR2032 6個315円
補給食類
(むらすずめ、おかき、ご飯、お茶パック)
1800円
KOWA輪行箱5,000円
梱包部材
ストラップ、ガムテープ、ビニールテープ、携帯はさみ
525円
AJ PBPジャージ7,500円
小計20,340円
総計423,130円
※ほとんど役に立たなかったので上記には計上していません。

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▼タイムチャート

0kmDEPART8/21 19:39シミュレーションタイム
(スタート時間換算)
37km小休止20:5320:560:02
74km仮眠22:2822:370:10
89km小休止23:1723:190:02
95km小休止23:3923:400:01
98kmSenonches 水補給23:4723:480:018/22 0:26
102km小休止8/22 0:010:020:01
107km小休止0:140:150:01
111km小休止0:290:310:02
119km小休止0:510:530:02
122km教会写真0:591:000:011:58
141kmMortagne au Perche1:572:560:592:55
158km3:413:430:02
222kmVillaines la Juhel6:447:501:078:16
251kmLassay les Chateaux9:049:280:24
282km雨具10:4510:500:05
288km雨具11:0511:100:05
316kmFougeres12:0614:122:0613:56
359km雨具15:5315:580:05
369kmTinteniac16:1716:430:2517:39
378km17:1417:180:04
395kmQuedillac17:5618:060:11
426km19:2319:280:05
454kmLoudeac20:5621:120:1522:51
456kmEverhotel21:2021:220:02
457kmMcdonald21:2722:160:48
457kmEverhotel22:178/23 3:114:558/23 3:51
480kmMerleac8/23 4:274:330:06
504kmSaint Nicolas du Pelem5:426:110:306:01
537kmCarhaix Plouguer7:367:510:158:17
590kmSizun10:2010:310:1111:33
619kmPont Albert Louppe11:5312:010:0813:23
630kmBrest12:3513:140:4014:00
656kmLa Roche Maurice付近?14:4114:500:10
668kmSizun15:2916:100:4116:30
716kmCarhaix Plouguer18:2019:160:5719:18
775kmMerleac21:5822:080:11
795kmLoudeac23:1023:420:318/24 0:43
798kmEverhotel23:578/24 3:553:59
800kmLoudeac8/24 4:074:150:085:43
833km仮眠5:485:550:08
838kmIllifaut6:096:250:17
886kmTinteniac8:309:401:1010:00
930km仮眠11:4611:580:12
941kmFougeres12:4012:500:1014:07
956kmSaint Ellier du Maine13:3914:250:46
956kmワイヤーロック14:2514:380:12
975km仮眠15:2515:340:10
984kmハーモニカ15:5616:000:04
989kmAmbrieres les Valees16:1516:170:0217:26
1030kmVillaines la Juhel18:2119:080:4719:58
1077kmスーパー21:3921:550:17
1111kmMortagne au Perche23:318/25 1:041:338/25 1:01
1119km仮眠8/25 1:331:590:27
1162km仮眠Brezolles4:124:330:215:37
1187kmDreux5:407:281:496:51
1200kmベスト着替え8:208:240:04
1252kmARRIVEE8/25 11:0211:56

▼走行データ

地 点区間距離積算距離区間平均時速区間総上昇量
DEPART:SQY0km0km- -0m
Villaines la Juhel221.8km221.8km23.0km/h1822m
Loudeac232.6km454.4km23.1km/h1914m
Brest175.8km630.1km21.0km/h1545m
Loudeac168.3km798.4km20.8km/h1733m
Villain la Juhel231.2km1029.6km21.2km/h1957m
ARRIVEE:SQY222.5km1252.1km19.8km/h1724m
全区間1252.1km21.5km/h10695m

※Garmin Dakota20のGPXデータを轍により解析

▼睡眠時間

19〜20日:6時間
20〜21日:5時間
21日午前中:1.5時間、午後0時間

***************

21日深夜 5分
22日〜23日ルデアック:4時間
23日〜24日ルデアック:3時間
24日午前:10分、午後10分
25日深夜:20分

***PBP期間中:約8時間***

25〜26日:6時間
26日午後:2時間
26〜27日:6時間

▼公式リザルト

項目人数完走率
完走/出走
総 数エントリー5225
出走5002
完走406881.3%
日 本エントリー173
出走162
完走12374.9%

▼完走記念品

2012/3/19、フランスから黄色い小包が届きました。マイヨ=ジョーヌをイメージしてあるのでしょうか?

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完走タイム入り記念メダルです。長方形で110mmx48mmx3mmとメダルというより記念プレートといった方がいいでしょうか。一部では栓抜きとも言われましたが。

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注文していた公式DVDも届きました(下記画像下側)。PAL方式なので普通のDVDプレーヤーでは再生できませんで、パソコン等で再生します。もっとも同じソースがYouTubeにもアップされていますけどね。
そしてオンボードカメラ映像にデジカメの静止画、様々な人から提供いただいた画像で構成したオリジナルビデオ(下記画像上側)、Blu-ray版とDVD版それぞれ完成しています。

120319dvd

この他にリザルト一覧他PBP記事の載った冊子、共に1200km走ったブルベカードも入っていました。

▼覚え書き

▽きっかけ

PBPを走ろうと思い始めたのはおそらく2009年9月、初めてブルベ1000kmに挑戦した頃だったでしょう。
600kmではまだ1200kmの半分だからまだまだ先が見えない。1000kmを走れば1200kmに手が届くのではないか、そう考えて1000kmに挑んだ人は少なくなかったはず。そして翌年にも1000kmを走り切ってそれは確かに1200kmにつながりました。

▽コースは

PBPのコースは1230kmで累積標高は12,000mにもなるとはいえ、アップダウンの負荷は意外にも緩く、39Tx25Tでほとんど間に合いました。フロントトリプルは必要ない?!下りは50Tx13Tよりもっと大きいギア比が欲しかったです。

信号で止まるのはサンカンタンとブレストの街中ぐらい、途中の交差点はほとんどロータリーで済むため止まることがありません。これは休むタイミングがないということでもあり、普段こちらで走っていると信号で1分もない位の停止がいかに休憩になっていたかを思い知ることにもなりました。

クルマは普通に走ってきます。が、フランスの場合自転車を追い越す時には1.5m以上間隔を取ることが義務づけられているらしく、実際にはクルマは完全に反対車線に移ってから追い越していきますから危ないことは全くありませんし、クラクションを鳴らされることもありません。だからトラックが追い越していってそれが通り過ぎるときの風圧で背中を押してもらう、そういうこともないわけです。

路面は石畳があるとか路面が粗いという話も聞きましたがそれは一部のみ。町の入口に減速用に石畳があるとか段差が設けてある他は、アスファルトはきれいで走りやすい道路がほとんどでした。DREUX前の15kmばかりの区間でアスファルトがひどく荒れている場所があっただけ、ただそこは終盤なので疲労がたまっている状況ですから人によってはかなり辛い区間になったみたい。

▽環境は

勾配の強弱だけがコース難易度でないことは重要、未体験なことが次々に起こりうる状況の中走ることはなかなかに困難でした。気をつけていても崩してしまった体調、補給ポイントのなさ、時間に余裕はあっても気持ちに余裕がなかったこと、苦しい場面は今でも夢に見る事があるほどです。

8月といってもこちらより気温は低くほぼ北海道並だとか、その点では走りやすい。ただスタート地点のサンカンタンはパリ同様気温が高く暑かったです。その暑さがくせ者で湿度が相当低いため気温のわりに不快度が低く、それが逆に知らない内に水分不足・脱水症状を招いてしまいました。
気温差は一日のうちに15℃にまで広がるので、それに対応できる準備が必要です。
夜から夜明けにかけて気温が下がる時間帯、なかには寒くて走れなくてDNFした人もいたそうですが下がった気温でも10℃を切るかという程度。1月2月の日本の冬のブルベを走ってきたはずのランドヌールにしてこれくらいで寒いとは準備不足の一言で片付けていいでしょう。

▽自転車は

自転車なんて何でもいい。
とそれでは元も子もないので...

BOMA Rapid-R、このフレームで組んだ自転車で走って何ら不安も不満もありませんでした。ただもっとポテンシャルは高かったはずでもっともっと走れたはず。
ブルベ用にと組んでもらったアンブロシオ・エクセルライトの32本手組ホイールとコンチネンタルGP4seasonは完璧。前述の荒い路面区間もそつなくこなし、PBPの前日含めると1300km以上走っても振動による手の痺れなどない快適性も発揮してくれました。パンクもなく、振れも出ないどころか出発前に僅かに出ていたリアの振れが直ってしまうほど。
自転車に関しては100点満点です。

周りを見ると前回の話とは違いカーボンフレームが主流になりアルミフレームより目立った印象で時代の流れを実感します。一方オーナーのこだわりが溢れるクロモリにチタンフレームも意外に多い。
フラットバーも少なくないけどMTBはかなり少ない。ミニベロはほとんどなし。
そして忘れてならないのがスペシャルバイクのカテゴリー。トライク(三輪車)やリカンベントやタンデムは当り前、フルカウルのストリームライナーに手漕ぎバイクは自転車の範疇に入るのか疑問に思える程。そして前後のキャリアに花を飾ってワンピースで走った”花おばさん”とPBP名物レトロバイクおじさんを見るにつけ、『自転車なんて何でもいい。』と言わざるを得ないのであります。

110825flower (※但し”花おばさん”はPBP4回完走にしてロッキーマウンテン1200kmの女性最速記録保持者)

この万国びっくり自転車ショー、PBPの楽しみと驚きの一面です。

▽装備は

パンクはなかったのでツール缶を開けることもありませんでした。
従って予備タイヤももちろん使用せず。
PCにはメカニックもあるので、何もかも万全に用意しておかなくてもトラブルが出て100km走れる状態を維持できるのであれば、その予備タイヤというようなものは持たなくてもいいかもしれません。
(装備を増やすより居眠り落車というようなトラブルを起こさない走りをすることの方が大切)

メカよりも服装、天候・気温は読み切れない部分がどうしてもあるので、それに対応できる様に想像しているより少し守備範囲の広いウエア選択が必要です。今回使わなかったものもありますが、それは無駄ではなくて使う場面にならなかった(=ラッキー)ということ。ウィンドブレーカを持って行き忘れたのは、使う必要なかったとはいえ明らかに失策でしたが。

ドロップバッグはかなり役立ちました。都合2回使えるというのが特に。
これをなしで走るとなると、装備をもっと絞って考えなくてはなりません。一度走っていればそれもやりやすいとは思いますが初めてだと難しそうです。

今回電池は奮発してリチウム単三電池を使いました。いつものeneloopより1.5倍ほど持つし重量も軽いので値段さえ気にしなければベストです。

デジカメはCANON IXY30Sを使用、仮眠ホテルで一度充電して大丈夫でした。PBP期間中の撮影は200枚くらい。動画はステムに取付けたGoProHDで撮影、こちらは2時間分(16GB)ほどの撮影で、ホテルで一度と途中MobileSolarで充電しながらの撮影でした。3500mAhのバッテリ容量に晴天半日で1000mAh相当の充電が可能なMobileSolarですが、太陽光充電はせいぜい500mAh分できればいい方と考えたならば、容量的にも5000mAh(今は5400mAh)のモバイルブースターの方が確実でしょう。

▽飲み物は

水、についてはよく語られます。硬水が多いのでお腹に合わない場合が多いとか、水道水は飲めるけどやはり合わない場合が多いとか。聞いた話だと水道水が合わなかったということは聞きませんでした。体が水を欲しているときには何でもいいのかも(笑)。
店では必ずミネラルウォーターを売っています。日本でも見かけるVittelとかEvianなど、1〜1.5Lで1EURと割安です。更に1Lで0.5EURというのもありましたけど、それを買ったゆば〜ばさんはあんまり良くなかったと言って次からはVittelなどを買ってました。
水が安いのに比べてジュース類は高いです。350mlか500mlで1.8〜2EUR、日本の倍の感覚です。
コカコーラはほぼどこでもあります。ミニッツメイドにオランジーナ(当時はまだ日本では発売されていなかった)といったオレンジジュースも大抵ありますがそれ以外、例えば缶コーヒーは見かけた覚えがありません。走る前にどの飲み物が自分に向いているかを予め確かめておくと助かります。

コントロールにはビール・ワイン等必ずあってしかも充実してます。なんででしょうね?

▽食べ物は

ブーランジェリーで買うパンは間違いなくどこでもおいしい。バゲット類は言うに及ばずクロワッサン、パンオショコラ、パンオレザンは必ずどこでもありますし、りんごや梨のタルトやパイも多いです。食事にはバゲットにジャンボン(ハム)とチーズをはさんだもので満足できれば問題ないでしょう。
ただ日本のコンビニで普通に売られているような透明プラパッケージに入った三角形の食パンサンドイッチがフランスにもありますが、これはパンがパッサパサで激しくまずい。フランス人は本当にパンをわかっているのかと疑いたくなる品なので避けるべきです。

PCの食事はたいていまずい、塩気が少ない場合が多い様です。もちろん中にはおいしいところもあり。
パスタは茹で過ぎでしたが、胃に優しい様にわざと柔らかくしてあるという見方もあります。
日本人なのでここ一番という時の為のものを用意しておくのもいいでしょう。むらすずめはおいしかったし、梅干しもかなり役立ちました。take3さんは羊羹でも高級品の『とらや』のものをわざわざ持って行ってとても役に立ったそうです。

▽完走の秘訣は

PBPを完走するのに必要なのは脚力、準備、計画... いえいえ
『気合いだ!』
コレに尽きます。
次の挑戦はない、一生に一度きりのチャンスと決めていたから走りきれたといってもウソではない。
出走前に聞いたK瀬氏の『命がけで走って下さい』という言葉は正にその通りでした。
『ブルベは危険なスポーツです』

話を戻しますと、走っていると何かしらネガティブな状況は起こりがちなもので、そういう時はもうここで止めようかとDNFを考える様になりまして、そうすると家族の顔が浮かんできたりあるいは家のローンの事や仕事の段取りが浮かんできたりしてここでくたばるわけにはいかない、無事に家に帰らなければならないなどと考えて、DNFを正当化しようとする心が芽生えます。無事に家に帰る事はもっとも大切なことではありますが、それにかこつけて弱い心が大きく広がってきて自分の心を支配してしまいます。そんなネガティブスパイラルを断ち切る強い気持ち=気合いが必要なのです。準備や計画、そして経験はその気合いを強固に支えるためのもの、と言ってもいいかもしれません。

SRの資格である600kmまでのブルベを走り切ればPBPを走る脚力は問題なくあると言えます。そこから先は脚力以外の問題になってくるわけで、600kmを走った時点で仮眠とか休憩の重要性が身にしみてくるでしょうから、それを更に確かなものにするのに1000kmブルベを走ることの意味が増してきます。1000kmブルベを完走できたら、PBP1200kmへの装備や計画についての課題も自ずと見えてくるので大丈夫。

▽PBPの魅力は

どこまでも広がる(飽きる程広がる)フランスの素晴らしい景色、
様々な国々のカラフルなジャージをまとい、想像以上に年齢層の広いランドヌール達、
驚く程大勢のボランティアスタッフ、
いつまでも沿道で手を振って応援してくれたり水や食べ物をふるまってくれるごく普通の人々、、、。

普段のブルベとは全く異なるそれはもう1200km続くお祭り、距離の長いブルベは他にもあるけどこれほどのスケールのお祭りはありません。
一般の人が『自転車の文化』を肌で感じる事ができる最高の舞台、それがPBPです。

そしてフランスの果てしない道を走ってみたら、日本の道がまたそれはそれで独自の魅力があることに気づきます。これもPBPを走って得た収穫でした。

▽ブルベのゴール

ブルベとは長距離自転車走行能力の認定、それを統括するACPの主催する最高最大のブルベが4年に一度のPBP。
それを完走した今、R-5000の資格も手に入った今、ブルベのゴールに達したのでしょうか。

最高峰のPBPに登頂したら、そこにはまだ見た事もない世界が果てしなく広がっているのに気づいた、そんな気分です。完走したのに不思議な程満足感が小さくてまた次も出たいという欲求と期待の方が大きい。

さすがに費用がかかるので4年後再び行ける可能性は低い。でも4年後がだめなら8年後、あるいは12年後でもまだ大丈夫。今年の完走者の最高年齢を越えようと思ったら32年後でもまだ足りないのだから!
いつか再びあの地平線を見に行きたい。ゴールはすなわちスタート地点でもあった様です。