Loudéac | ルデアック | 449km |
Saint-Nicolas-du-Pelem | サン・ニコラ・デュ・ペルム | 490km |
Carhex-Plouguer | カレ・プルゲ | 525km |
Brest | ブレスト | 618km |
とあわただしくドアを開ける腹ポさんの声で目が覚めた。ん?ぁぁぁ・・・
ああ、よく寝た。ブルベ中にこんなに深く眠れたのは記憶にない、最高の仮眠だ。
時間を確認すると2時半、ん、まだこの時間なら大丈夫。シミュレーションではルデアック仮眠後出発が3:00am、プラス腹ポさん達のスタート遅れ1:20を足したら4:20amというところだから。
だが皆が急いでいるところ一人ゆっくりするわけにもいかないので昨日買っておいたハンバーガーを半分だけぱくつき、充電を終えたアイテムを装備しなおし、ささっと着替える。
今日はAudaxJapan PBPジャージにインナーはCRAFTのPROZEROで防寒対策、まだトイレの不安があるので普通のレーパン、タイツは2XUにする。
出かける前にトイレへ、そして再び出血。。。
いちおうまたティッシュを挟んでおく(泣)。こんなことでしっかり目が覚めるのは正直勘弁願いたい。
時間も余分に喰ってしまい、かなり3人を待たせて最後に部屋を出て出発した。
前日までと打って変わって眠気は解消、全くゼロではないけどかなりスッキリした目でナイトランに挑む。しっかり休んだせいだろう、膝も今はいい様子。そして雨も上がっている。(8/22 22:17-8/23 3:12)
私設エイド、4:29
ママさんがてきぱきと動き回っているけど、今時刻は午前4時半。交代で休みながらずっと続けているのだろうけど、よくこんな時間にしてるなあ。
PBPはボランティアの人達の数と熱意に支えられているんだけども、その数の内に入らないこんな人達までホントなんでこんなことやってくれているんだろうとこっちが疑問に思う程頑張ってくれている。
だからこういう補給はとてもチカラになる。普段のブルベではあり得ない(規定違反)、私設エイドでの補給もPBPで楽しみにしていたことの一つだった。温かい思い出を一つ残してMerléac(メルレアック)の街を後にする。(4:27-4:33)
町を抜けて少し下り、暗い夜道をしばらく走り続ける。
5:37
町の灯りに浮かぶランドヌールの影、本来の補給ポイントはもうすぐ。
サン・ニコラ・デュ・ペレム、ここは補給/仮眠だけのポイントで通過チェックを受ける必要はない。
しかしまだ次のカレまでは少し距離があるのでここで補給しておくのが得策。
雨でドロドロになっている地面を歩いてテントに入り、サンドイッチとクロワッサンとコーヒーを。
温かい飲み物がありがたい気温になっている。昨日までと違ってCRAFTの冬用アンダーを着てきたので止まっても寒さにふるえることはない。うん、これは正解であった。kennethさんと会って少し話したのはここだったかな。
(5:42-6:11)
そろそろ空に明るみが出て来たがここら辺りでまた3人と切れてしまい一人旅になってしまった。膝の怪しい感じもまた顔を出してきてしまったし。
夜明け前、7:03
夜が明けた。2回目の朝。教会の屋根あたりに見える黒い点は鳥の群れ。
夜明け、7:11
後ろから小グループがやってきた。
いいペースなので抜かれ際に乗車して最後尾に着く。5名ほどで30km/h前後で走っている。間に埼玉反射ベストがいるので日本人もいる。しばらく走って調子いいのでローテーションに加わりますか。間を詰めて集団の中に入ると...。
小グループ、7:22
先頭を牽いていた人が降りて来た。前の日本人に何か話しかけている。
そしてこちらにもやってきて英語で話しかけて来た。たぶんこんなことを言っていた。
『Join the rotation? If not, STAY OUT.』
そこで『Yes, I'll join.』とでも言えば良かったのだろうがその"stay out"という言葉に妙にカチンときてせっかくローテに加わろうかとしていたヤル気をそがれ、足を止めて後退。いやしかしそれではアチラからみれば単に都合良く紛れてきたインチキ野郎にしか写らなかったはずで、それはまずい対応だったろうに。
後ろに下がってみたら後から3人ほどオマケがくっついてきていた。その一番最後まで下がり、しばらく後をつけて牽いてもらう。結局インチキ野郎なのだ。
坂を上がって街に入って来た。ブレスト手前のPC、カレ・プレゲ。追いついた埼玉ジャージを含む日本人グループと一緒にゲートに入って行く。
コントロールはこちら。
まずはブルベカードにチェック。どこのPCでもチェックを入れるコントロールは奥の方にあった。
済んだらレストランへ移動。
あまりお腹はすいてないのでパンとショコラで軽く。
ショコラとパン、7:47
食事を済ませて外へ出る。爽やかな朝という感じでもなくどんよりとした朝の風景。
7:49
通路向こうの白いテントはメカニックみたい。PCには大抵メカニックがいて大抵のメンテ/修理は請け負ってくれるしパーツ販売もしている。普段のブルベどころか大抵のサイクルイベントより手厚いサポートなのだが、そもそもPCの間が最低でも50kmで通常は80〜90kmあるし最初のPCなんか220km先だったというのを忘れてはならない。
特に急いでやっているわけではないがだんだんPCでの振る舞いもわかってきたので予定よりも短い滞在で済むようになってきた。(7:36-7:51)
次はいよいよブレストだと思うと気持ちが高まる、武者震いもする。
一時間ほど走ってHuelgoat(ユエルゴア)の町へ入って来たら左手にホテルがあり下のカフェで休憩しているランドヌールが見える。その右手の小さな湖の風景が素晴らしかったので一時停止。駐車スペースに入って行って風景をパチリ。モノクロで。
ユエルゴア、8:56
少し進んで石造りの家と小屋、まるで童話の世界。
9:09
ある意味あまりに現実離れした風景に、これは夢の中を走っているのではないかと錯覚しそうになることがしばしばある。夢の中でもいいじゃないか、この記憶だけはしっかり憶えておくんだ。残しておくんだ。
ふとかわしていったライダーを見ると、あ!これは!!
いたいた。スタートで前にいたピンクパンサー、ハンドル(ステム)にまたがって元気に走行中。
ピンクパンサー、9:37
ぬいぐるみのライディングフォームはPBPで見た中でもピカイチ(笑)、けどライトの電池交換の時は本体は外せなさそうだから前のレンズ部分を外して電池を引っ張りだすんだろうな。もしくは電池交換せずとも持つかも。
お先に、とトトロが先行させていただく。
小さく続くアップダウンの途中で日本人唯一のリカンベントライダー、take3さんに遭遇。後ろになびかせているポールになびく日の丸が目印だ。遅れ気味で、などと少し話をして下りにかかると『では時間稼ぎに先に行きます』と加速。こちらもアウタートップで漕いで追走するが50km/hを越える辺りで離されてしまった。ドラフィティングがほとんど利かないから着いて行けない!やがてその姿が小さくなって消えて行った。
ブレストまでにはこのコース最高標高350mの峠・ロックトレヴェゼルが待っているハズだ。
ここは心してかからねばなるまい。
と、構えていたがいったいどこから峠道になるのかと思っていたらいつのまにか登っているような緩〜い峠道だった。その分距離は長いが日本のきつい峠道とは全く違い、勾配は2〜3%が主体。
だんだん頂上に近づいて行くにつれて霧が濃くなってきた。
霧、9:48
反対車線から降りてくるランドヌールの数も増えてきたがその姿が突然現れるといった感じ。
ROC TREVEZEL
なんとなく頂上を超えて幾分拍子抜けで今度は下り。この調子だと下りも長いはずだ。
ところが霧で視界がかなり悪いので前走者は下りだけど徐行していて30km/hまで出ていない。それに付き合って行くほど我慢強くはないので、足を止めている彼らの横をぐんぐんと抜きさって行く。GPSの画面で道なりがわかるので視界が悪くとも走れるわけだ。そもそも去年の福岡400の、土砂降り真夜中ダウンヒルよりはだいぶマシ。
そうやって下に降りて行くにしたがってだんだん霧は薄くなり快適なダウンヒルになってきたあたりで残念ながら下り終了。
賑やかな街に入ってきた。大勢のランドヌールが休憩している。通り過ぎようかな、とも思ったけど店もあるみたいだしちょっと休憩して行こう。ここはSizun(シジュン)。
シジュンの街中
水とコカコーラZEROとMIKADOを。
ZEROは売っているのを道中では初めてみたので買ってみた。MIKADOは、前にどこかネットで見かけて憶えていたので買ったけど要するにグリコのポッキーそのもの。こちらヨーロッパではミカドという名前で展開しているらしい。味はまさしくポッキーなのでかなり安心感の高い補給食(笑)。
MIKADO、10:25
シジュンを離れ、またアップダウンを走って行く。
緩い上り坂途中でマヤさんを見つけて声をかけた。会うのは初めてだけど雑誌にも登場していた方だからこっちはよく知っている。(もちろんアチラは知らない)
『貯金がなくて時間ぎりぎりで完走できるかどうかわからないワ』
と言われていたが走りはしっかりしていたので大丈夫だろう。道脇で子供達もいる私設エイドで止まってなにか貰っていくみたいだったので、お先に失礼する。
反対車線からやってくるランドヌールの数が増えて来た。ときおりコチラ側に手を振ったり声をかけてくれたりする、ブルベ往復ルートでお馴染みの光景はちょっと近畿200の忍坂の下りを思い出す。
沿道の応援の人の姿も。白黒ストライプの旗はブルターニュの旗だ。
11:05
かけてくれる応援の声には必ず応えよう。その時に振っていた左手が画像に写り込んでいる。
めるしー、11:23
教会の尖塔が見えてきた。それを過ぎるまではゆるい上り坂が続くパターンはもうわかった。
教会へ向かって
郊外に出るとちょくちょく見かける牧草ロール、ここには特にたくさん転がっていた。もしかして上空からみたら何か文字か図柄になってたりして、と妄想しながら走るのも面白い。
11:26
再び坂を少し登って行き、また下りになっていく。
坂を降りたら... (photo by 水色KLEIN)
ああ!
海が見える!海が見えた!
ブレストだ。ついに来たぞ!
斜張橋のイロワーズ橋が見える。
スピードを落として場所を選んで停止。この一枚を撮影しよう。
イロワーズ橋、11:49
思うことは万国みな同じ。この橋を撮っておきたいよねぇ。
写真撮影ポイント
おっと誰かと思ったら水色KLEINさんここで再会、もっと先へ行ってるかと思った。もうちょっとここで写真撮ったりするからと一旦お別れ。
(※余談:もう1、2時間早かったら霧のせいであまりよく見えなかったらしい。)
イロワーズ橋に添うようにあるのがアルベール・ルップ橋で自転車はそちらを走る。
向かって左は海、大西洋だ。初めて見る大西洋。
大西洋、12:00
橋を渡り終えて坂道を下ると港町の風景が目に入る。曇り空なのが残念だ。
坂を降りて港町
右手は大きな城壁が見えている。海岸をこのまま進むと軍港があるがその手前でコースは折り返す。時間的にはそれくらい寄り道する余裕はあるはずだが気持ちに余裕がなかったな。
12:24
城塞が見えてこの後は市街地へ向けてちょっと勾配がきつくなっていた。少し膝にくるがあと少し。
12:28
久々に大きな街中に入り信号も出て来た。
ほどなくブレストのPCに到着、体育館の中のコントロールに向かいブルベカードにチェックを受ける。
体育館、12:37
体育館の中にフェンスが並べられているが空いている奥の方へ入れると面倒そうだったので、自転車は適当に外に停めておいた。
レストランに移動して軽くパンとコーヒーを。
そばには大勢のランドヌールがマットレスの上でしばしの休息を取っている。というよりも爆睡。手前はK瀬さんだ。
壁際に頭を向けて寝転んで仮眠。うるさかろうが明るかろうが関係なし。
昨日あれだけ眠かったのにここまで今日はほとんど眠気なく快調に来れた。つくづくルデアックのホテル作戦が成功したと実感する。
レストラン出入り口で目に入ったのはシトロエンの名車DS。新車の様にぴかぴか、でもこれは飾りではなくちゃんと現役で、その後も他のコントロール近くで見かけた。
DS、13:05
後にも先にもDSを見たのはコレ一台だけ。フランスだからシトロエンの古いのはいっぱいいるだろうと思ったけど、パリ市内でもBXすら2台しか見なかったし2CVも同じく2台見ただけだった。
レストランで何か食べて、ここでもTeramuraさんと再会したが先着していた彼らは既に出発したらしい。
13:07(photo by Hiraku Teramura)
トイレも無事済ませて、ブレストのPCを出発した。(12:35-13:15)
(photo by Hiraku Teramura)
さあ、折り返しのブレストまでは辿り着いた。
ブレスト−PBPオフィシャルサイトに各コントロールの地点紹介があり、その中でブレストの書き出しはこうなっている。(英語版)
At the midway point of the ride, Brest will be your unique opportunity to see the sea.
ずっと内陸を走ってきて折返し地点で突如現れる海。これまでと全く違う風景が強烈に脳裏に刻まれる。
(旅の真ん中で、ブレストは海を見るというまたとない機会となるだろう)
その"to see the sea"という言葉をタイトルにつけていたのがあの名古屋600kmのコースだ。
距離は半分だけど、このPBPのコースをリスペクトして設定されたであろうあのコースの意味がようやく理解できる。ここまできてやっと"to see the sea"を実感した。厳しい名古屋600kmのコースはここにつながっていた、ここに来る為の道だったのだと。
いや、納得するのはまだ早計、ゴールのサンカンタンまで無事辿り着いて、それからだ。