étape 3 - 5:やがて雨〜Loudéac

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Villaines-la-Juhelヴィレンヌ・ラ・ジュエル221km
Fougèresフジェール310km
Tinténiac タンテニアック363km
Quedillac ケディヤック390km
Loudéacルデアック449km


▽仕切り直し

夜が明けてくる。こちらの夜明けは徐々にやってくるのではなくて一気に明るくなってくるような気がする。
気温は最も低くなる時間で寒いけどなんとか我慢しなければ。オフィシャルの反射ベストがいい具合に防風の役目をしてくれているのが助かる。
まだまぶたに重さを感じている。明るくなってきてもまだ眠気が治まりきらない。
雲は厚くて曇っているから日が射すことはない。

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ヴィレンヌ・ラ・ジュエルの街を抜けていく。

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コントロールのある様な街の出入りにはあちこちにこのような案内板がある。これまで走ってきた日本のブルベではあり得ない道しるべ。

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ブレスト行きとパリ行きで色が変えてあり、それぞれ矢印の白っぽい部分は反射材になっている。赤のバツ印はここに来たらミスコースしているという意味だ。このサインを見逃さなければキューシートもGPSもなしでも完走できそう。むしろ街中のごちゃごちゃしたところはGPSのルートと若干違うところもあったので、この矢印に気をつけていた方が正解。

そういえばPBPをスタートして4人で走るのは初めてになる。
その上前を牽いてもらってるのにどうもあんまりペースが上がらない=足を引っ張っていることもあって少し早いが休憩にしてもらった。ちょうど町の真ん中でBarがあったり小さなスーパーもあるし、ここはLassay-les-Châteaux(ラセ・レ・シャトー)、251km地点。
水とオレンジジュースとパンとチョコを買う。炭酸入りオレンジジュースはヴェルサイユのホテル前”コンビニ”で買っていたのと同じもの(オランジーナ)。

膝の方は水色KLEINさんからアドバイスを貰って、今貼っている形のテーピングに加えて外側にも一本追加、XI形にしてみた。

1108220924c2町の広場、9:42

ここの周りにはそこらに花が飾り付けてあって、そのままでも絵本のような建物に囲まれた空間がより一層メルヘンチックになっていて和む。

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1108240924dc29:24

後からそういえばここはあの風景に似ていることに気づいた。オダックス近畿サイトの表紙にある、2007年のPBP写真。雨具をはためかせてランドヌール達が走っているあの写真の風景、その中にいたのだった。

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オダックス近畿サイトに掲載されていた写真

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目の前を走るランドヌール、9:24

ブルベを申し込む度にそれとなく見ていたサイトの写真の風景、今その中にいるのか。

休んでいるうちに眠気も引っ込んできたようだ。膝の方もこれで少しいけるかもしれない。(9:05-9:28)
再び4人で走り出す。

1108220929c2出発、9:29

先ほどから雲行きが怪しかったが次第にポツポツと降ってきた。
あいにく町と町との間で適当に雨宿りできそうな場所がなさそうなので、ちょっとした木陰で止まって腹ポさん達はカッパを着る。雨足は弱いので上だけ。
この辺り前後して同じように雨具を出している人も多かった。

1108221049c2雨具を、10:49

まだ大丈夫かなとここでは自分はカッパを着ずにいた。(10:45-10:50)

が、まもなく雨は本降りになってきたので結局上だけでも着ることにして再び停車。
どうせ止まるならさっき着ておけば無駄にならなかったな。こういうわずかなことでも無駄足は面白くない。(11:06-11:10)

このあと相変わらずペースが上がらなくてまた他の3人からちぎれてしまっては待ってもらう我ながらなさけない走りっぷり。

▽étape 3:迷走〜Fougères

一時間ばかり走って2番目のPC、フジェールに到着。

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(photo by 水色KLEIN)

ここには大きな城があってそれが見所でもある。『地球の歩き方 フランス』ではコース途中の地点は全く出てないのだが、ここフジェールだけはそのお城の記事が載っていて、それによると元ブルターニュ公国の外敵侵入を防ぐ要塞だったそうだ。PCの場所はその城の少し手前になる。

1108221204c2コントロール、12:04

ブルベカードのチェックをさっさと済ませトイレに向かう。
おそるおそる見てみると...どうやら出血はおさまっている。やれ一安心。とりあえずこのまま持ってくれれば、と願うばかり。

ここには多くの自転車が集まっている。ちょうどストリームライナーが発車するところだ。座席の上にゴムの様なカバーを被せているのは雨除けらしい。

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こちらは三輪タンデム車。タンデムは珍しくなくなるほど見かけたが三輪はこれだけ、メカ的にはかなり工夫があるようだ。

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さて時間的にはちょうどお昼だし、食事は外のレストランで何かで食べようということでPCを後にする。観光地なのでレストランなどはあちこちにある様だ。

1108221206c2出発、12:06

ところが水色KLEINさんを見失ってしまった。先行したべりさんもつかまらず腹ポさんと行ったり来たりするがわからない。ケータイで連絡取れる同士の二人が一緒にいるのが仇になったか。
結局腹ポさんと二人で城が見える広場前のイタリアンレストランに入り、ピザとコーラを頼んだ。
店の人が盗難防止にと自転車を店の前のテラスまで上げておきなさいと親切にしてくれた。

1108221357c3ピザ、13:57

ピザはヴェルサイユの店のを思い出すようにここのも生地がパリパリでおいしかった。が、大きさのせいと油も多かったので全部食べきれなかったのが残念。

小雨降る中、再びカッパを着て出発。
結局ここフジェールに滞在したのが2時間を越えてしまった。(12:07-14:13)
予定より時間を喰ってしまったことより2人と離れている方が気になる。とにかく次のPCに行けば落ち合えるだろう。

▽étape 4:順調〜Tinténiac

フジェールから次のタンテニアックまでは50km余りと区間距離は短い。

1108221439c3走行中、14:39

雨はだんだんやんできた。そうなるとカッパは暑い、汗をかいてくる。
タンテニアックへの看板があるところに飾り立てた自転車がある。ここで止まってカッパを脱ぐことにした。(15:55-16:00)

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カッパを脱ぐ、15:59 (photo by 腹ポ)

雨は上がったし気分もよくなってきて若干ペースを上げられるようになってきた。もっともずっと腹ポさんに牽いてもらっていたのだけど。

飛ばしているわけではないが、追いついてしまったら集団をパスしていく。後方確認をして追い抜くタイミングを伺って。

1108221605c3集団をパス、16:05

スタート以来久々に走れている。
こんな調子でときどき追い越して走っていたら、追い抜いたアメリカ人が

『Oh〜、TOTORO!』

と声を上げた。

『Do you know?』と振り返ると

『TOTTORO〜〜、TOTTO〜RO〜〜』

と唄っている。いやいや歌まで知ってるとはおそれいった(笑)。トトロを知っている人はまた別にもいたけどやはりアメリカ人。ドイツ人は知らなかった。

そうしてフジェールのレストランを出てから2時間ちょっとで3番目のPCであるタンテニアックへ到着した。カッパを脱ぐ以外に止まらなかったのでこの区間の巡航速度25km/hがそのまま移動平均速度になってタイムをいくらか取り戻した。
タンテニアックはレンヌの北東およそ30kmにある小さな街。

1108221617c3タンテニアック到着、16:17

ここで二人と無事合流し、軽く補給を済ませる程度で出発。ここは短く済ませられたので少し時間を戻せたはずだ。(16:18-16:44)

1108221743c4はるかな道、17:43

町を抜けると同じような開けた道、緩い勾配のアップダウンがどこまでも続く。
登り加減が少しきつめかな、というところはだいたい町の入口であることが多い。きついといっても10%まで勾配がつくことはほとんどなく、冴えない脚でも39Tx25Tで間に合っている。

1108221755c417:55

ここはケディヤックの町の中心部、通行速度を落とさせるためにこのような石畳や段差がところどころにある。

急に係員の姿が見えて脇道に誘導される、と思ったらシークレットポイントであった。予めチェックする様に指定されているPCとは別に、そこへ着くまで秘密にされているのがシークレットポイントで、ここでのチェックを受けなければ完走扱いにはならない必須ポイントである。

1108221756c317:56

ブルベカードのSECRET欄にスタンプとサインを貰って、コーラか何か飲んでさっさと出発。(17:55-18:07)

1108221801c318:01

町を出てまた開けた道に出て前方を走っている人に追いついたと思ったら、さっきシークレットで見かけて先に出ていたレイさん、黄色のジャケットにピンクのタイヤが目印。

1108221811c418:11

相変わらず元気な様子で走っている。よく考えるとあの人はフリースタートの時間のはずだから、少なくともスタート時刻が1時間半は後のはず、今ここに一緒にいるということは既にそれだけの時間差を挽回している、つまり先行されているということだ。う〜ん、さすが。

田園の長い道を走って町に入ると中心部に教会があってその周りに店がある。

1108221854c418:54

どの町もほぼ同じパターンであることがわかってきた。町の入口には町名の標識があり、町を出る時には町名に斜め線を重ねてここでその町が終わることを示す標識がある。そして町から出ると車道の速度制限が緩くなり、50km/hか70km/h、90km/hのところもあった。

再び合流できて4人で走っているところにとある台湾ライダーが接近、追走してきた。それでペースが徐々に上がり、これは無理だと早々に戦線離脱。
その後ゆるゆると走っていたら道路脇で仮眠しているライダー、さっきの台湾ライダーであった。なんだもうダウンなのかと通り過ぎる。ただ他にも台湾ジャージはあちこちで見かけたが、登りは同ペースの欧米人より速くて力強い気合いの感じられる走りだった印象が残っている。

しばらくして前方で停止しているべりさんを発見、なんでも段差を乗り越えた衝撃でライトが外れてしまったと。それを止めていたネジを探すも見つからず困っていた。少し探してみるもののさすがに小さなネジはちょっと見つかりそうもない。
補助ライトはあるからなんとかなるだろうけど、このハブダイナモのライトはとあるランドヌールから譲り受けたというか託されたものなのでそれが使えないことが残念で辛そう。
しばらく先で待っていた腹ポさんと合流して進んでいった。

▽étape 5:休息〜Loudéac

また町に入って来た。さっきのタンテニアックよりは大きな街で鉄道も通っている。何よりここルデアックで仮眠を取る予定なので一区切りつけられるという安心感が大きい。

まもなく日暮れになるけど沿道にはこのように応援の人がまだまだいる。
ハイタッチを求めて手を出している人がいるときに、こんな風に腕を後ろに引いている人には要注意!
タッチするときにいきおいつけて叩く様にするので手が痛い!
上手な人は腕を前の方に出していて、タッチする瞬間手を引くように衝撃を緩めてくれる。(それがわかったのはずいぶん後の方だけど)

1108222052c4タッチ!、20:52

係員の誘導に従ってフェンス沿いを進み、バルーンゲートをくぐって4番目のPCルデアックに着いた。

1108222056c4ゲート、20:56

今までのところにもあった青いラインの入ったPBP横断幕。
よく見るとタンテニアックとルデアックの間にちゃっかりケディヤックと書かれている。今気がついてもしかたがないけど前もってわかっていたら補給のしかたも変えられたかな。

1108222100c421:00

(実はブルベカードの復路のページに補給ポイントとしてケディヤックが書かれているのだが、それに気づくのもずっと後の事だった。)

コントロールは奥の方、ここから入る。

1108222101c421:01

ブルベカードを出してスタンプとサインを貰う。
部屋の壁にはルデアックの位置とオープン時間を表に示してあった。

1108222103c421:03

ドロップバッグの位置はわかりやすいところを確保してくれていたので迷わずにすぐわかった。グッディツアーで世話をしてくれている日本語達者なステファニーさんともう一人のスタッフがいた。

1108222106c421:06

自分のバッグの番号をステファニーさんに伝えてピックアップ。それを背負ったらその足でPCを後にする。雨は再び降り出していた。

ルデアックのPCから1.5kmほど離れたところに腹ポさんがホテル:EVERHOTELを予約してくれている。4人部屋のファミリールームが2日間で100ユーロ(11,500円)というまことにお得な物件。inainaさんも同じホテル(のシングルか)を取っていたらしい。
建物は新築同様、というよりも事前にGoogleストリートビューで確認したらここはまだ造成中の画像だったくらい。本当にあるのかとちょっと心配だった。

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仮眠場所EVERHOTEL (photo by 水色KLEIN)

部屋にドロップバッグを放り込んで、ホテル隣のマクドナルドへ行って夕食を。
基本ハンバーガーだが久々に生野菜にありつけたので腹も落ち着く様な気がする。
フランスくんだりまで来て結局マクドで落ち着くっていうのもなんだかなぁ、とは思うがおいしく食べられるのだから仕方ない。日本のマクドよりパンも旨い。

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21:57、マクドナルドにて

朝食用にもハンバーガーを買ってホテルに戻った。雨は激しくなり雷鳴が轟く。予報通りサンダーストームになったがこのタイミングで仮眠するというのはまことにラッキー。
シャワーを浴びてジャージを脱いで睡眠用のTシャツとズボンに着替え、カメラや携帯の充電をセットしてベッドに潜る。ああなんという安らかな心地よさ、PBP第一幕の終演といった気分で眠りに入ったのは23時半過ぎくらいだったろうか。

(つづく)