【今回の走行:Rapid-R】
平均:18.9km/h,最高:67.2km/h,距離:671km,累積標高10,052m
※eTrex30表示

海の日を含むこの連休に600kmのブルベを走りに行ってきます。ただ通常のブルベ、BRMとは違うSR600=Super Randonnee 600(シューペル・ランドネ 600、略称SR600)という今年から始まった新しいカテゴリーのブルベです。

簡単にいうと600kmで獲得標高10,000mを越える山岳パーマネント(常設)コースです。
その中に二つの部門が設けられていて制限時間が50時間+獲得標高増加分となるランドヌール部門と、制限時間はなく1日当たり80km以上の走行をすればよいツーリスト部門があり、そのランドヌール部門での完走を目指します。

今回走るコースはオダックス埼玉が主催するSR600 Fuji。既に多くの人が完走されている、SR600として最初にオープンされたコースになります。従いましてある程度走行に関する情報が出回っておりますので、計画が幾分立てやすくなっていました。

公式の獲得標高は11,105m、標高値が500m増えるごとに1時間制限時間が増えるルールがあるので、このコースの制限時間は52時間とされています。

さて、そのSR600は走れる?難しい? これまで600kmブルベの走行は11回、今年は既に2回走行してきました。
獲得標高の最も大きいのは3度走った名古屋600km"To See The Sea"コース、7000m級です。
苦労しながらもあれを3回走ったんだから、更に獲得標高が4,000mも増えたとしても52時間あれば余裕じゃないか、と楽観視してみたり・・・ 過去に登った最大標高差1500mをはるかに越える登りを含んでの11,000mもの獲得標高を、登りが苦手で好きでもない自分に600kmという【短い】距離の中でそれがこなせるものか?、と不安視してみたり・・・。
これまでのBRM600の前とは違う緊張感がまとわりついてきます。
でも楽しいから自転車に乗る、乗れば自転車は楽しい。いつもどこでも変わらないその自分の姿勢を貫いて、不安は期待に、緊張はワクワク感に変えていくしかないのです!

いつものようにGPSの登録するルートデータ用に走行シミュレーションをExcelで計算、移動平均速度(通常のサイコンに表示される平均速度)を21km/hと過去もっとも遅かった最初の名古屋600と同等に設定して計画、さらに中間地点での仮眠をきっちりビジネスホテルに宿泊することにして、全体として49時間30分余りとしました。
スタート時刻は6時、朝に余裕を持たせています。そうするとゴール予定は翌々日の朝7時半ということになります。ゴール後には近くの健康ランド「高尾の湯ふろっぴィ」で汗を流して仮眠する予定にしてましたが、そこの早朝割引が5〜7時入館なのでその計画よりもうちょっと早くゴールしてお得に休むのがベスト、逆に5時より早いと深夜割増料金がかさむ時間帯になるのでどこかで時間つぶしする必要がありますが無駄な心配?(笑)。

出走日時は一ヶ月前の申込み時に決めておきますが、一週間前までに変更することも可能です。
天気予報を見て台風の様な荒天になる可能性があるなら延期しようと考えていましたが、どうやらそれはなさそうで予定通りの出走日時で大丈夫。

とにかく準備はできた。さあ”冒険”に出かけよう。

▽プロローグ

まずは前日にスタート地点まで移動して前泊します。
当日の昼前、いつもの買い物用リュックに旅行荷物や自転車装備品を詰め込んで8kgほどになったのを背負って家を出発。まずは腹ごしらえに中庄の「とも作」でぶっかけうどんとおでん。

腰の強いうどんを食べて粘り腰の走行をするのだ。ごちそうさま。

そのまま東へ少し進んで庭瀬駅から輪行をかけます。ここは改札くぐってすぐ上り線のホームだから移動がごく短いので便利な駅。
岡山駅でのぞみに乗換え。平日なので自由席でも空いていまして最後尾の輪行ボジションを確保、3時間半の旅をしばし楽しみます。新横浜から在来線に乗換えて八王子まで、これは混んでいて途中迄立っていたので疲れました。
八王子駅で輪行を解いておよそ6キロほど西へ走って高尾駅前に向かいます。

値段とか設備とかであれば八王子界隈により良いビジネスホテルは多く存在するわけですが、スタートの利便性を第一に考えてスタート地点の目の前にある「きくやホテル」を予約しておきました。いまどきオンライン予約に入っておらず電話で予約するところ。
コンビニは道向かいにあるし(スタートのレシート取得を指定されているところ)、自転車は部屋に置かせてもらえたし(たぶんこれまでSR600に挑戦した人も利用したのではないか)、ホテルの人も親切で不満はありませんでした。

さて夕食は... 実はここの近辺にはNifty時代からのネット友達がいます。その人達にお世話になってお迎えに来て貰い、一緒に夕食をいただくことにしていました。
ドド子さん&せーちゃん、te2.さん達、こちらで会うのは2006年にTokyoエンデューロに来て以来になります。ごちそうと花咲く話で十分な充電ができました。

宿に戻って輪行のため外してあった自転車装備品をセット、最終準備確認を済ませておやすみなさい。


朝は5時前に起床、昨日買っておいたパンをまず食べて軽くシャワー浴びて着替えて準備をし、ホテルをチェックアウトします。

そして輪行旅行荷物をコインロッカーに預けておきます。スタート地点の高尾駅の北口側には改札の中にしかコインロッカーがないので、南側まで回ってそちらのロッカーに荷物を入れておきました。

帰りはその南口側から戻ってくるし「ふろっぴィ」もこちら側なので、時間次第でゴール直前で回収してもいいし「ふろっぴィ」に行く途中に回収してもいいだろうと。

駅の北側に戻り、駅前でスタート前の写真を一つ。

それからスタート証明であるレシート取得にファミリーマート(※高尾駅前にあるセブンイレブンとファミリーマートと2店どちらでもよい)に寄ります。するともう一人ブルベらしい人がいますので尋ねますとやはり今日SR600を走るそうで、同じく6時スタートだとか。

店内で買い物を済ませて6:00ちょうどのレシートを入手したのでスタートします。BianchiのA野さんはもう少し準備があるそうなので、ではお先に参ります。お互いがんばりましょう。
一緒に連れ立って走るわけではないけれど、同じ道を走っている人がいるということはなにかしら心の支えになります。それがブルベ。
なお顔見知りでは4月にフレッシュを共に走った331氏が6時間前を、PBPで同室だったゆば〜ばさんが4時間後を走るので、その二人に会う事はないですけどもそれも安心につながります。

▽PC1 山伏峠:市街地を抜けて

スタートしてすぐ団地への坂という感じで軽く登って降りて、それからしばらく市街地走行になります。道は走りにくくはないけど信号ストップが多くてなかなか前に進めません。
歩道には朝のジョギングをしている人がちらほら。

あきる野ICを通過。前にこちらにきた時にはなかったっけ。

やっと信号が少なくなって走れるようになってきました。
キューシート等で注意を促していた歩道へ迂回する箇所をその通りに通過。トンネル内は落書きだらけ。

ただこの後で青梅の市街地に入ると再び信号ストップは出てきます。それを過ぎる20キロくらいまでが序盤の我慢の区間といえるでしょうか。そう考えるとできるだけ早い時間帯にここはクリアするのが得策の様で、今日の6時スタートは遅かったか。4時スタートにすれば、あるいは暗い時間の2時3時スタートでも良かったかなと走りながら思います。

郊外に出ると一人のローディに追いつき始めていました。そのまま行くと追いつきますがくっついてしまうとブルベのルールに引っ掛かるので少しペースを緩めて距離を取ります。
っと、赤信号で止まったときに左右を見てそのまま進んでしまいやがった!信号無視!
カチューシャジャージの青いフレーム(SHOPブランド?)のオマエだ!

次の信号で止まったらちょっとヒトコト言うてやろうと思ったが、またしても信号無視、┣字路の信号は関係ないとばかりそのまま突っ切ってしまった。
トウキョウだかサイタマだか知らんがここらのローディはマナー悪いという固定観念が定着だ。こちらはビデオカメラ装備だから今度は証拠映像を撮ってあるぞ。

いやいや、せっかくのSR600の旅にそんな信号無視ヤロウに気分を害されたまま走っていたらもったいない。そんなことは忘れて周りの風景を楽しみながら走ろう。

そろそろ登りにかかってきました。峠道っぽくなってきます。

最初のPCは山伏峠です。標高は600mを越えていて普通なら主役級の峠になってもいいのですが今日は雑魚扱い。上り勾配もきつくありませんし序盤なんで39x25Tでなんとかこなせました。

登り切ったところにあるその看板と写真を撮るのが通過証明になります。低い位置にあるので撮影はしやすい。

下ろうとしてすぐの道路脇に座り込んでいるローディがいました。パンク修理みたいですがもう作業は終わって後片付けの様子なのでそのまま通過。

▽PC2めがね橋:トラブル発生

少し雨粒が落ちてきました。小雨だったのが田んぼの水面を見るとそこそこ波紋が広がるくらいまで。

ただ行く手の空を見ると明るいのでそのうち止むだろうとそのまま進んで行きます。
案の定だんだんおさまってきました。

秩父市街地に入ります。駅前の歩道はきれいに整備されてますね。

斜張橋を渡って、

およそ60キロで最初の補給に立ち寄ります。普段のブルベと違いPCがコンビニに設定されていないのでPC以外で補給ポイントを確保しておく必要があります。

地元のコーヒー牛乳「わたぼく牛乳」をごくごく。それからパンをかじって出発。

しばらく坂はなく郊外の道を進みます。どうやらこの週末にお祭りがあるところが多いらしく、ここにはみこしがあって大勢の人が集まっていました。

かなり大きなみこしの様です。この辺りの通りにはしめ縄が張られていましたし、別の広場にお祭り会場が設営中でした。

富岡市に入りました。ここで昼食の予定です。名物の「おきりこみ」を食べようと富岡製糸場の真ん前の店に向かいますと、

お目当ての「はや味」は臨時休業、やられた!
とりあえず富岡製糸場の記念撮影だけはしておくか。

この界隈の観光通りにも「おきりこみ」の店はあるもののなんとなくスルー、お昼はじゃあ「おぎのや」の峠の釜飯にしよう。
実は富岡製糸場のすぐそばにもその「おぎのや」の支店がありましたが、やっぱり本店通るんだからそこじゃないとね。

というわけで本線に復帰、しかし釜飯まではまだ距離があるので軽く補給していこう。

(ここで補給していたのはある意味正解だったりする)

富岡市を抜けてこれからその「おぎのや」に向かう山岳コースに入ろうというその時、イベントが発生します。

右手のSTI変速レバーが空振り、シフトワイヤーが切れました。 昨年のBRM929近畿600km以来。
”一年に一度はワイヤー替えておこう”と準備時には思っていて、それなら9月のブルベが終わった頃合いになるなと想定していたところでしたがトラブルは意外と早くやってきました。

『まぁしかたない。修理するか』

自販機横のスペースを借りてここで作業することにします。

背負っているバックパックを降ろしメットを脱いで作業開始。

トラブル発生を報告?!する余裕があるのか?!

まずは切れたワイヤーを抜く事がポイントです。前回は切れたのを取り除けなかったのでワイヤー交換ができませんでした。
レバーを動かしながら中をのぞいて切れたワイヤーがあることを確かめて、タイコと呼ばれるワイヤー端部を引っ張り出して除去成功、よし。

さあ、それでは新しいワイヤーに張り替えよう。ハンドルのバーエンドキャップを外して中に仕込んであるワイヤーを出してアウターケーブルに通していきます。

あ、ストッパーの形が違うな・・・
これは・・・ブレーキ用だ。
そういえばワイヤーもちょい太いと思った。

普通なら持ってすぐにお気づくところがやはり動揺があるのかブレーキ用ワイヤーをそのまま通そうとしていたのです。
STIからそれを引っこ抜いて、改めてハンドルバー内のシフトワイヤーを...取り出して...
ハンドルバーの中を探るも中にはもう他にワイヤーは入っていない、ありゃりゃ?
(そういえば前に仕込んでいた予備ワイヤーが白っぽく粉吹いていたから新しいのと交換しようとして取り出してそのままだったのか)

交換できるワイヤーがない以上、応急処置で進むしかありません。しかしここからのコースまだ500km、そのままで進む事は不可能です。残り40kmで雄ノ山峠を残すのみだった前回とは違います。

リタイアか・・・ ブルベ初のリタイアが現実となってきました。

(途中に自転車屋はあったな。そしてここから先は峠道になるので何もない。)

替えのシフトワイヤーを手に入れて直すしかありません。

そこまで走行できるようにする為にツール缶からタイラップを取り出して、走行しやすいギアポジションにディレイラーを固定します。
作業を一旦終えて出走準備。

ウェットティッシュで汚れた手を拭いて、バックパックを背負いメットを被りグローブを嵌め自転車に跨がると180度進路変更、来た道を戻っていきます。
ディレイラーは昨年は17Tに固定してそれは坂で重過ぎたので今度は23Tに固定しています。昨年よりフロントアウターギアが50Tから52Tに大きくなっているからこれくらいでも大丈夫だろうと思いましたがやっぱり軽過ぎてスピードが乗りませんで、失敗。25km/hまで出せない速度でゆるゆると進行します。

途中反射ベストを着たSR600走者と思われる人が反対車線に見えましたので軽く手を上げて挨拶。進路とは反対へ進む反射ベストを見てあちらは怪訝そうな表情をしていましたね。

富岡市内に戻ってまもなく一般車を扱っている自転車屋を見つけましたが、尋ねてみるとシフトワイヤーはないとのこと。

ここもなし。

富岡市内を通り抜けて藤岡市へ。ここからはルート通りでなく市街地へ向かう幹線道路の近道を行く事にします。その方が店もあるかもしれません。

ホームセンターにはパーツがある可能性が。

ただコメリはどうか?

自転車パーツコーナーには一般車のブレーキワイヤーがあったのみでした。缶コーヒー一本飲んで一息いれて、次へ。

ここもなし。

藤岡市内のイトーヨーカードーをのぞいてみますがこちらには自転車販売コーナーはなし。

そのすぐ近くの自転車屋に入ってみますと「ちょっと待って」と。

「これでいい?」

出て来たのは一般用(シマノ純正ではない)と思われるシフトワイヤー、タイコの形状は同じ様ですしワイヤー径も大丈夫。

「それください!」

ただ作業は自分でやってというのでそれは構いませんと、店先をちょっと借りて作業にかかります。
潤滑用スプレー使っていいよ、と気を遣ってくれたりしました。

STIの中にワイヤーを通し、アウターケーブルに通してディレイラーまで引張り、ワイヤー固定ボルトを軽く締めて仮締め。
カチカチとシフトレバーを動かしてワイヤーがその通りに動くことを確認、よし。あとはシフト調整をし直せばいいなと。

ワイヤーの初期伸びを取るためにダウンチューブ下のワイヤーをつかんで軽くトントンと引っ張るとスコンッと2cmほど動きました。

「ンっ!」

今度はシフトレバーを動かしてもワイヤーは動きません。おや?!
STIの中を見るとワイヤーのタイコがひっかかる部分にそれがありませんでワイヤーが見えていません。外れて内部にひっかかっているらしい。
ワイヤーを逆から押し戻してやろうと四苦八苦するも全く戻らず動く気配すらありません。完全に引っ掛かってしまってます。

「マズイ...」
さて、ここでどうするか。

現在シフトワイヤーはSTI側で固定されている状態で張られています。
先ほどまではディレイラーボディをタイラップでしばってポジションを固定していたわけですが、それだとギアを変えるにはタイラップを張り替えないといけません。
この状態なら希望のポジションでワイヤー固定ボルトを締めてしまえばディレイラーの位置調整は可能=スプロケのギアを選択可能、更にアウターワイヤー調整ボルトを回せばギア2枚分まで移動も可能。
ということで引っ掛かったワイヤーを活かしてリアの19T,21T,23Tが調整ボルトを回せる範囲で変えられるポジションにワイヤーを固定し、これで走る事にしました。
フロントギアは52T,39T,30T、リアは19T,21T,23T。平地ではケイデンス上げて30km/h、登りは30Tx23Tなら15%まではこなせるはずです。

STIは直せなかったけどワイヤーを張れたのでマシにはなった。自転車屋のおとっつぁんには詳細は伝えずに直ったという顔をしてお礼を言って、来た道に戻って行きました。

時刻はもう3時、お昼の時間をだいぶ過ぎています。峠の釜飯までは遠いこともあり、途中すき家を見つけてささっと牛丼(並)と卵をやっつけます。

ワイヤー切れたポイントまで戻り、ブルベ復帰。ここでおよそ4時間が経過しました。
4時間か、10時発のゆば〜ばさんとだぶる時間帯だな(大汗)。

普段のブルベなら次のPCへ辿り着く前にタイムアウトが待っているロスですがSR600には途中のPCに時間制限はありません。あくまでゴールタイムの制限があるのみで、更にそれを越えたとしてもツーリスト部門として認定を受けることができます。つまり走り続ける意味はまだ十分ある。ここまで高いオカネかけてやってきてスゴスゴと帰るわけにはいかない、おいそれと再チャレンジできるほど近くないのだから。
(まだだ、まだ終わらんよ)
時間的にもメカ的にもハンデを背負ってしまいましたが、不思議と走りたいという意欲は萎えるどころかむしろ大きくなってきていました。ただ何の目論見もなく続けるのではなく、立てていた計画からどう変えて行けばいいのか、大まかに想定ができていてその上のことではあります。

まだ平坦基調な道を走っていきますと、前方にゴツゴツした奇妙な形の山が見えてきました。

あれが妙義山らしい。

右折ポイントでその山の形を記録。この先に道の駅がありますがそこへは行きませんがね。

街中の路肩にきれいに整備された用水路があります。通っている水もきれいでした。

徐々に登り始めてきたなという頃合いで大きな建物が見えてきました。
ここが峠の釜飯の「おぎのや」です。

先ほど牛丼食べたのでここではCAMELBAKに麦茶を追加して、炭酸飲料を一本飲んでトイレ休憩しただけ。持帰りできる峠の釜飯はさすがに重たいのでパス(笑)。
ああでもやっぱりこのコースならここで釜飯食べて行く方が良かったよなぁ、とちょっと後悔しながらスタートするとまた小雨が降ってきました。
ここからはしばらく登りが続くので、ワイヤー調整ボルトを回してリアを23Tにしておきます。雨はすぐにやんで一安心。

さほど厳しい勾配はなく、目の前に目的の大きな「めがね橋」が見えてきました。ここがPC2。

チェーンはアウターギアにかかっているので勾配はゆるいところですね。

この先の駐車場で一旦停車、途中ツイッター等を通じて様子を心配してくれていた腹ポさんから情報をもらっていた軽井沢の自転車屋に連絡を取ってみます。出張サービスもあってこの辺りまでなら来てももらえるそうですが、トラブルの状況からして現場対応は難しいと思い、19時までにはお店に辿り着けそうでもあるのでその旨を伝えて待っていてもらい、一縷の望みをそこに託して先を急ぎます。

ギアは23Tにしてあるので30Tx23Tでシャカシャカとケイデンス高めで漕いで思ったより早く碓氷峠クリア。
ここから長野県、軽井沢に入ります。下り始める前にリアを19Tに再調整。

すぐに軽井沢の街に入ります。JR軽井沢駅の前に到着してそこからもう一度電話をして店の位置とここからの行き方を教えてもらいます。場所はここ軽井沢じゃなくて中軽井沢の駅に近いらしい。

到着は19時前、バイパス通り沿いにありますが少し土手を上がったような位置にあるのでわかりにくいかもしれません、「五月野自転車」。
店内にはサーリーのバイクが目立ちますが、バンブーフレーム(!)やデローザも飾ってありましてなかなかこだわりのお店の様です。
Fサス付クロスバイク(ほぼ新車)の先客の作業があって、しばらくブルベの話などしながら店内で待ちます。焦る気持ちも出てきますがここまできたらじっと待て。

そして状況を改めて詳しく話して修理にかかってもらいます。やはりそのままでは引っかかったワイヤーは抜けません。
STIのアセンブリを分解してやっとひっかかっていたワイヤーが外れました。さすがプロの技。
そして店頭にあったロード用のUNEXのコーティングワイヤーを改めてセット。

ディレイラーの調整をしてもらって完全復帰!助かりました。
お代もワイヤー代+工賃1,600円と良心的でした。

もうすっかり日が暮れました。お礼を言って店を後にします。

すぐ近くにローソンがあるのでここで夕食。普段コンビニでは食べない主義ですがここからは時間短縮の為にそれは撤回、やれるだけのことをやるのです。

カルボナーラを食べて、麦茶をCAMELBAKに補充してリセット完了。ルートに復帰してこれから最高地点であるPC3へ向かいましょう。
スタートして14時間が過ぎましたがまだ130kmほどしか進んでいませんでこれからが本番、さあ行くぞ!

▽PC3日本国道最高地点:再会

5時間近く遅れたわけですがそのせいでいいこともありました。
花火大会が始まってちょうど目の前で見る事ができたのです。
走りながら右手の向こうに轟音と共に夜空に開く大輪の花。

そういえばアタック秋田の夜にも花火を見たっけ。あの時よりもずっと近くに見えてる。
ただ、落ち着いて見て行く余裕は今はありませんで、ペダルを停めることなく登り坂にかかっていきます。

しばらく登っていると前にテールランプが一つ見えてきました。だんだんと追いついてきてそして聞いてみると9時スタートのSR600挑戦者でした。
"6時スタートなんですがワイヤー切れて直していたりして遅れてしまいましてね”
などと話をしていると、もう一人10時スタートの人が少し前を走っているとか。
その人の知り合いで6時スタートの人がいるって聞いたとか、それワタクシ(笑)。
そうか、ゆば〜ばさん前を走っているんだな。予想通り、10時スタートなら順調に行っているみたい。

では遅れが大きいのでお先に、とじわじわと登り坂を先行させていただきました。っとこの辺なかなか勾配きつい!先に出た都合でゆっくりスピード落とすわけにもいきませんからダンシング交えてスピードを維持して登ります。後ろのライトが見えなくなったところで安心してスピードダウン(笑)。

つづら折れを登りきっての峰の茶屋での補給はパス、というより補給できそうな時間帯ではないのでそのまま通過して下りに突入、ここから群馬県に入ります。
下らなくてもいいのに、とこぼしつつ標高差700mほどダウンヒル、そしてまた登りに。

夜ですがクルマの通りがわりとあります。
この先にはそう、草津温泉があるからです。それが近づいてくるとあの
”クサツヨイトコ、イチドハオイデ” のメロディがどこからか聞こえてきます。へぇ、こんな夜でも放送かなんかしてるのかな?と思ったら...

その正体は道路にありました。
路面に横方向に細かく溝が切ってある場所があります。その溝の間隔が一定でなく広くなったり狭くなったりしています。ここをクルマが通る時にタイヤから生じる音が溝の間隔によって高低ができてそれが音階になるようにしてあるのです。だからクルマが通る度に”クサツヨイトコ...”が聞こえてくると、そういう理屈。そういえば「メロディライン」という看板があったがこのことかと。
残念ながら自転車の登り速度では遅すぎて音は出ません(笑)。

短い下りがあるところを過ぎたら後ろから「追いついた!」と声が。
ゆば〜ばさんでした。いや〜久しぶり、PBP以来かも?!
どこかで停まっていたのかいつのまにか追い越していたらしい。
これこれかくかくしかじかとなぜ今ここにいるのかを説明、とにかくSR600だからツーリスト部門になっていいから走り続けるつもり、予定していた上田のホテルには朝到着しそうだけどそこで休んで行くよと。
ゆば〜ばさんはどこで休憩?と聞くと渋峠下りた湯田中にある24時間入れる日帰り入浴で休む予定だとか。
じゃあお互い頑張ってゴール目指しましょう、もしかしたら上田で休んでいる間にまた追い越されるかもね。

ということで先行させていただきます。

夜の峠道を登って行きます。
標高が上がるにつれて気温が下がっていくのを肌で感じますが登りでもあるし寒くはなく、むしろ快適なくらい。
ただ時折強い硫黄の臭いが鼻をつきます。ここらが駐停車禁止の殺生河原らしい。息を止めて通過したいけどそうはいかず、ゼイハァと激しく吸わざるを得ません。

幾つものカーブを登っているとGPSの地図上ではまた元に戻っているように見えるくらいの細かいつづら折れが続いて行きます。こっちの方角で合っているのか?と一瞬思いますが、なに、ここはとにかく登れの一手しかない。
今日一番の登りではあるけれどまだまだこの先長いのでペースは抑えていかなけりゃ。心拍は140台でとどめておける速度で進行していくとGPSのルートデータに仕込んである通過予定時刻からじわじわと遅れが広がっていきますがそれでも構わずにペース配分重視でペダルを漕ぎます。

途中薮の中から鹿のグループが出てきましたので「おりゃッ」と叫んで威嚇、邪魔するな!馬鹿野郎!じゃなかった鹿野郎!(叫ぶと無駄に心拍上がるし)

景色は全く見えず雲もかかっているから星も見えず、ただ漆黒の闇の道を自分のライトで照らされるだけの視界と、手許に光るGPSの画面の地図とゆっくりと増えていく標高値だけを見ながら永遠に登って行く様な坂を漕ぎ続けて行きます。何のために登っているのかは考えもしない、ただ先へ進むしかないと。

やがて日付を越えて、標高2,000mも越えてやっとPC3、日本国道最高地点の石碑に到着しました。
駐車スペースには2、3人のオートバイツーリングの人もいるみたい。
到達照明写真を撮るためにバックパックから撮影用のライトを出してきて、光を当てながら自転車のフレームバッヂと石碑が写る様に何度か試します。デジカメはマニュアルにしてISO6400に固定。

これはサドルバッグとととろが後ろに影になって写ったのが面白いけど、ととろが白飛びしたのでNG。

そんなこんなで色々やっているとわりと時間を取られるみたいです。
さあ、今日一番のシゴトは済んだ。しばらくは下りでリフレッシュしましょう。過去最高の標高差を登り切った感動を味わうことなど忘れてしまっていました。

▽PC4道の駅やまのうち〜PC5菅平:夜明け

ここまで登りに登った分を一気に取り返す、下り分もルート中もっとも大きい区間です。
本来なら日が暮れて間もない薄明かりがまだ残っているかという頃合いに下る筈でしたが真っ暗。
しかし雨は降ってないし霧も出ていないしコンディションは悪くない。

気温をGPSで確認すると13℃、登りは良かったけど下りは防寒しておこうとウィンドブレーカを着てさらにジレも重ね着しておきました。CRAFTの冬用インナーも持ってますがそれを着る程ではなさそう。

長い直線的な下りはなくて、右に左にカーブを繰り返していきます。ライトの灯りでは曲がる先まで照らしてくれることはないので、路側帯とセンターラインの白線を目安にコーナーの曲がり具合を判断してコーナリング開始前に必要な減速を終える様にブレーキング。
脚力は使いませんが頭と眼に神経が集中してくのでそれなりに消耗していきます。直線で余裕のあるときにはCAMELBAKのプラグをさっとくわえて給水、ボトルでは面倒になる給水(夜間ではボトルをケージに戻すのが見え辛くて手間がかかる)が簡単にできることが下りでも発揮されます。

”だいぶ下ったかな”
とGPSの標高値を見るとまだ余裕で4桁。さすがに長い!そう、今回のコースでは登りの時も下りの時も距離よりも標高値の変化でどれくらい進んでいるかを判断していました。何m登ったか、何m下ったか、あと何m分あるのか等。

永遠に下るかというその感覚に半ば酔いしれてテンションは上がり、眠気は全く襲ってきません。むっちゃ楽しい〜”ヒャッハー”
ウィンドブレーカの腕の部分がバサバサとちぎれんばかりの音を立てているのをうるさく感じながら、下ハン握ったまま降りて行きます。時折脚を空回しして休み疲れしない様にも気をつけながら。

ひときわ明るい街灯が見えてきました。ん!街灯じゃなくてあれはセブンイレブンの看板だ。ということは・・・
道の駅の青看板も見えました、ここがPC4です。なるほど真夜中にブンブン飛ばしているとここを見過ごすこともありそうだ。セブンイレブンが向かいにあるのを調べてあったので大丈夫だった。

ただ道の駅の指定されている撮影ポイントを探すのに駐車場を2周ほどくるくる。ちょっと詰めが甘かったな。

ここでもライトで照らして通過照明写真を無事撮影。

そしてさっきの向かいのセブンイレブンで補給をしておきます。コーヒー牛乳&サンドイッチ、眠眠打破も投入しておきました。

撮影しっぱなしになっていたカメラに写っていた姿、ゴミを捨てにいくところ。ウィンドブレーカとジレを着ています。

さあ、あとは菅平への登りだ。それをやっつければ休めるぞ。
登りにかかるまえにもう一度補給をしていきます。サークルKで吸収の早いポカリを1本飲み干してウォーターチャージ。

今度はこれまでより斜度があり、再び汗がだらだら流れてきます。ウィンドブレーカがもう邪魔、停まって脱いでいきます。

眠気も出て来てペダルに込める力が薄まってきています。心拍も120くらいしか上がっていません。
ガムを噛んだり梅干し食べたりしながらの目覚ましを続けながら勾配のきつい登坂を続けます。
登るにしたがって明るくなってきました。ただ日の出を拝める様な場所でも雲行きでもないのが残念。

やっとてっぺんが見えてきました。

「上信越高原国立公園 菅平高原」看板前で通過証明写真撮影。予定ではここは真っ暗のはずだった。

ここの看板の隣にあるダイドーの自販機で缶コーヒーを一本。もうモーニングコーヒーになってしまいました。

さあ後は下るだけだ。
明るい中、うねうねと細かいカーブを降りて行きます。路面が結構荒れているので後ろからクルマが来ていないのを確かめつつ車線中央寄りで降りて行きます。真っ暗だったら結構難所かもしれません、明るい時に下れてそれだけは良かった。眠気もおさまっているし。

上田市内にあっさり到着し、予約していた上田プラザホテルにチェックインしました。普通ならチェックアウトする時間でも快く受付けてくれまして、10時チェックアウトですが11時までいいですよと言っていただけました。自転車も部屋に入れさせてもらえましたし。

まずは浴衣に着替えて着ているものを全部脱いで洗濯します。あ、浴衣に着替えてウロウロしても大丈夫な様に、使い捨てパンツは持って来て履いてますよ。
ここはコインランドリー形式ではなくフロントに500円払って洗濯/乾燥するシステム。洗濯が終わったら乾燥機へ移しておきますよ、ということでその手間が省けるのがありがたい。
部屋に戻って風呂に入りさっぱりしているウチに朝食の用意ができたとフロントからご案内。1Fの食堂へ降りて一番乗りで朝飯をいただきます。
朝食料金が800円と正直高い。しかし盛りだくさんのおかずでボリューム満点。ここまで質的エネルギー不足の感があったのでここで”ごちそう”をいただく意義は十分ありました。ヘタにファミレス等でモーニング食べるより正解だったと。

お腹いっぱい食べて、そしてベッドに戻ってしばらくお休み。10時前まで3時間弱寝ましょう。
・・・目覚ましより早く目が覚めてしまったのはやはり時間が気になっていたからでしょうか。意識はあるまま時間まで目を瞑ってベッドに横たわって休んでおきます。

(つづく)