店先にWAKOSのチェーンオイルスプレーが置いてあったというので借りてチェーンにかけておく。これはありがたい、スタッフK氏の配慮の様だ。
ここを出る頃はクローズタイムの0時54分まであと10分少々だったからたぶん最後尾だろう。(0:30-0:41)
ルート沿いに富山湾へ。遠くに浮かぶ海王丸のマストを明かりを眺める。去年とはまるで違う光景、それもブルベだ。空には明るい下弦の月が大きく輝いているので雨雲はもうない。(0:05)
『さあ、帰ろう。』
ここからまた長い道のりが始まるのだが、雨がやんだ安心感から完走に不安を持つことはなかった。インナーはCRAFTに着替えたので寒さもどうってことはなく、快調だ。
隊列を組んで市街地を走り抜けて行く。たまに来るクルマに気をつけながら。
工事の迂回路の短い激坂にやってきた。調子に乗ってインナーローに入れてホイホイと登ってしまう。後から思うとこれは良くなかったかもしれない。
神通川のダムの横を通ると今年もゴウゴウと凄まじい音をたてて放水されている。名古屋600お馴染みの風景、ふとNHK-FMの番組「音の風景」を連想する。
雨がやんで雲も晴れてきたせいか、気温は進むにつれて徐々に下がっていく。5℃、4℃...
往路と同じ道の駅細入で休憩。ここでツール缶を取り出しブレーキシューを交換することにした。
ちょうど手頃な高さの台があったので、そこへバイクを乗せて作業開始。
特に摩耗の大きかったリアブレーキ側を新品に入れ替えた。すごう峠からの下りではずっとブレーキを当てっぱなしだったから、ブレーキアーチもフレームもブレーキシューの削りカスで真っ黒。作業前にブレーキアーチ周りをウエットティッシュで拭ってからブレーキシューを交換した。ブルベの最中で替えたのは今回が初めて。
作業を終えて温かい缶コーヒーを飲む。道の駅といってもこんな時間に売店は開いてないので自販機のみ、ここで何か食べていた方が良かったので前もって何か買っておけばよかったと、パンを食べている腹ポさん達を見て思った。そういえばフロントバッグにエナジージェルがあった(45g、117kcal。カフェイン80mg)ので、それを一つ飲んでおく。(2:55-3:18)
峠道らしい坂道になってきた辺りで左膝に再び違和感が発生、踏み込むとじんわり弱く痛む。普通でも皆についていくのがやっとの登坂スピードを落とさざるを得なくなった。ギアを軽くして力をかけない様に走る。10km/h行けるところを7km/h。眠気も襲ってきてますます冴えない。
膝を傷めるというのはかなりヤバい。来週以降のことを考えると無理はできないからDNFも頭にチラつく、というよりタイムアウトの可能性が出るほどのペースダウンだ。この峠以降登りは嫌というほど待っている。
そういう負の発想をしていると気力も落ちて自販機の前で停車してしまった。まぁそういう時はさらっと休んでしまった方がかえって後が楽になることもある。
何か飲もうとするが小銭が切れていてお札を出すのも面倒だったので結局何も飲まなかった。せっかく停まってもこれでは意味がない。(5:09-5:13)
少し進んでいくと峠手前で赤い反射ベストを来た人に追いつく。inainaさんかと思ったけど違ってて、それはMuAuanさんだった。同じBOMA仲間、どうもよろしくと声をかけていくがかなり参っているみたい。
やっとこさすごう峠に到着、気温はマイナス1℃になっていた。一昨年がプラス4℃だったから5℃も低い。
それでも先月の福岡300の湯布院のマイナス4℃よりマシだ。
左手の駐車場にある峠小屋で皆待っているはず。人影が見えた。
どうも長くお待たせしました。昨日PC2で会ったスタッフのK氏もそこにいた。こんなところに温かい部屋があったとは。
ここで「膝の調子が悪いから間に合わないかもしれない、構わず先へ行ってくれ。」
と皆に伝える。今まで参加してきたブルベでこれほどリタイアを覚悟したのは今までにないこと。
”とにかくゆっくり行きましょう”と皆ははげましてくれる。ありがたいやら情けないやら。
缶コーヒーを飲んでトイレを済ませて出発。(5:40-5:48)
往路と違って明るいし雨も降ってないのでまずは快調に下っていく。雲海の向こうに雪を抱いた山々、今回のベストショットにして過去2回には見ることのなかった光景にしばし辛いことを忘れ心は晴れやかになった。
同じコースを走ってもその難易度を大きく左右するのが天候なら、その景色を大きく変えるのも天候の仕業。自然の力に時に抗い時に流され、そして私達はそういう自然の中を走り続ける。
リアのブレーキシューを替えて減速操作が安定したので気持ちよいダウンヒル、「焼肉かをる」のあるところまでは一気に降りてきた。眠気も収まってきている。
ところでこの時に実感したのだが、アンブロシオの手組ホイールは加速だけでなく減速つまりブレーキングも良い。初めはリムが新品だからシューの食いつきがいいのかと思ったけどそうではなく、スポークの突っ張りがよく効いているので僅かなタッチでも車体を減速させる力への変換が良いというイメージ。前も後ろもブレーキを軽く当てたときの反応が敏感かつ素直なのでとても下りやすい。そのブレーキングという点でもDURA-ACE WH-7850-C24-TLは手組に及ばず 出番がないということになってしまった。
それからPC4まではわずかに上り勾配になるが心配された向かい風はあまりなく、というより隊列の最後尾について風を受けず順調に走ることができた。
PC4到着は7時前、クローズには1時間以上あるので普通ならなんら問題のない時間。しかしこのあとの峠が越えられる膝かどうか...不安は消えないまま。
朝飯に温かいもの、どん兵衛大盛りをすする。カッパの上着は脱いだがズボンは履いたままで出発。(6:59-7:31)
宮峠への登りではやはりかなりスピード落とさざるを得ない。心拍は120台なので体はぜんぜん大丈夫だが脂汗がにじむ。
朝の陽射しに気温があがっていくのを感じる、普通なら心地よいサイクリング日和。膝痛さえなければ今日こそ絶好のサイクリング日和。
水色KLEINさんからキネシオテープを貰って左膝に貼ってみた。膝の動きを制限するこわばった感じがあるがそれが奏功し、踏み込んでも痛みは出なくなった!ありがとう。これで大丈夫。
適切な幅のものをちょうどいい長さに予め切ってあるこんなものを持っていた彼に感謝。次からは自分の装備の中にもこれを追加しておこう、使いたくはないものだけれど。
上呂から下呂へは帰りは下り基調なのでアップダウンがあれども多少は楽。補給食に買っておいたソイジョイをかじりながら前から離れないよう”ついていく”。
下呂駅前の土産物店が並ぶ前、昨日寄った「マルコ」前を通過して橋を渡る。雨で水量が増加しているが濁ってはいない。
毎年寄っている下呂のデイリーで休憩、お昼はまだ先だけど焼きそばを食べる。補給食にキットカットを買ってトライバッグへ入れておいた。(9:52-10:17)
左膝の調子は回復してきたが、今度は右膝に違和感が出てきた。右に出るのはかなり久しぶり。
痛みはひどくなっていくわけではないし、まだ立ち漕ぎをすると膝の角度が異なるせいか痛みがでないのでそれでなんとか舞台峠は越えられた。だいぶ離れてしまったけれど。
加子母で休憩した時だったか右にもテーピングを施したが、少しマシになったけど鈍痛は出ているので上りで踏み込めなくないのは変わらず、またしても遅れてしまう。カッパのズボンを脱いで身軽にはなったのだけど。
「ロキソニン飲んでみますか」
と水色KLEINさんの提案で一ついただくことにした。交差点の歩道に上がってツール缶からそれを一つ出してくれる。今まで服用したことはないけどここは背に腹は代えられぬ。
「痛みがなくなったらなくなったで無理を重ねてよけい傷めることにもつながりますから気をつけて。」
と助言をもらい、それを飲んでボトルも一口飲んで、再び走り始めた。
賽ノ神トンネルもなんとか越えて、下り基調でPC5へ。
ここまでこの時間に着いたらゴールはできるだろう。
昼食に味噌かつ弁当、デザートにサークルKオリジナルの天使のプリンも追加した。(13:01-13:35)
ここからがスタッフ自ら「もっとも嫌な区間」と言うお墨付きのアップダウンが待っている。
まず最初のそれをこなして木曽川に出た。
明るい陽射しの中に真っ赤な武並橋が見えてくる。さあこれを渡って...
勾配15%の激坂をインナーローで丁寧に登り、そのあとも10%弱の坂が続き短い距離であっけなく標高を稼ぐ。後ろを走ってくれているやまぐちんさんも「長いですねー」とため息。
坂を登り詰めて少し下ってまた登り。
私の膝の調子も気遣ってか、道の駅らっせいみさとで一息休憩することに。
時間は余裕があったから名物の蕎麦を食べても良かったのだけど、気持ちに余裕がなかった。
お土産によもぎカステラを買って出発。(15:07-15:19)
最後の峠、小原トンネルへの登りにかかってきた。ここさえ越してしまえば...
登りはペースを合わせてもらいゆっくりと進む。
往路と同じサークルKで最後の補給。ここでやっと眠眠打破を投入、そしてチョコアイスを食べるくらい温かくなっていた。もう一つ眠気覚ましに効果があるというあたりめも買ってみた。(16:24-16:40)
薬がきいて痛みは薄らいだ膝をかばいつつ皆から離れゆっくり登りトンネルをクリア。
ここからは下り。最後の下りを楽しむ様に勢い良く下って行く。途中にわか雨が降るがさっきのコンビニで着込んでいたウィンドブレーカに任せてそのまま、行く手の空は雲が切れていたから我慢していたら案の定陽射しが戻ってきた。
下って行くスピードを維持したまま高速で進行する。下り基調というには妙にハイペースになって少々の登りはダンシングでクリアしていく。先頭の水色KLEINさんががっつり牽きまくり、直後にべりさんがぴったり張り付いている。おいおいけしかけているのか?(笑)
『これから走りに出かけるような勢い』とはやまぐちんさんの言葉。
あたりめをかじってモグモグと噛みながら腰をやや浮かせてRapid-Rを左右に振り回す。
さすがに登りが少し長くなると無理はできず間を空けてしまうのが、次の下りで加速して追いつく。
後ろに一人ついているのは健宝の湯でも一緒だったMBKに乗っためばる君、”いつもこんな調子なんですか?”と。
それはその質問を受けたやまぐちんさん自身も思っていたことだろう。
ロキソニンはよく効いている。でなければこのハイペースについていけるわけがない。
ここにきて心拍は150まで上昇してきた。序盤なら持続できる心拍だが疲労がたまってくると最大心拍が落ちるのでここへ来ての150は目一杯のレッドゾーンに近い。
小原トンネルの下りからほとんど下ハンを握りっぱなしで漕ぎ続ける。この低い姿勢の方が膝への負担が少ないのかもしれないが、右、左とハンドルを引きつけるとRapid-Rは面白いようにぐいぐい進んで行く。
トヨタの町中へ帰ってきて土手道へ戻るもハイペースを維持し、そのまま6人揃ってゴール。18:29到着で37h29mの認定タイムとなった。
ブルベカードを提出してサイン、いつものようにメダルを申請した。
味噌汁と今回はやけに豪華に並んだおやつにサンドイッチを遠慮なくぱくぱくいただく。
やまぐちんさんのお連れの、先日勝山桜プチブルべで209kmを完走した方にも会えて、べりさんと尾澤代表の女性陣でブルベ勧誘。まぁこの名古屋600はおすすめしませんけどね(苦笑)。
話は尽きねどもそろそろ家路に着かなくては。またブルベでの再会を期して、A bientot!
MAMAYAMAに続いてRapid-Rも名古屋600を走り切ることができた。ととろと一緒にクルマに積み込む。
満足感を土産に深夜の高速を岡山へ向けてクルマを走らせる。 いくつかのSA・PAで仮眠を取りつつ早朝帰宅する頃にはロキソニンの効用は切れ、右膝に鈍痛が再び顔を出してきた。帰宅して洗濯だけ済ませたら、そのまま眠りこんでしまった。
やまぐちんさんは初めての600km挑戦、しかも400kmを飛ばしてのこの苛酷な600kmを完走は凄い。脚力・体力は私より上なのでどこのブルベでももう大丈夫に違いない。
なかなか楽に走らせてくれない名古屋600、今回も一筋縄ではいかなかった。膝を傷めながらも時間的には余裕をもって完走できたことは、今年最大のあのブルベに向けての大いなる自信になった。もっともあれを走るには難関のこの名古屋600をクリアしなければいけないようなそんな気がしたので、年初は予定していなかったのに参加することにしたのだ。
「To See The Sea」
海を見に行こう。そう、あの海を見に行くのだ。
JAPANブランドのBOMA=望馬に乗って、僕はあの海を見に行こう、皆と一緒に。