プロローグ:Un prologue

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スタートは朝5時、ゴールクローズは翌日夜9時。終了が早くなるので遠征帰りには都合良い時間設定のブルベは名古屋600【To See The Sea】。昨年雨の中二日間走り通した過去最も苛酷な自転車走行。

今年は一ヶ月後ろにずれて気象的難易度は薄れたはず。

さあもう一度日本海へ、行こうママヤマ。

出発:Depart

朝3時30分起床、軽くシャワーを浴びて昨日買ってあったパンと缶コーヒーで朝食。

今日は薄手ロングスリーブのWizardフォーシーズンジャージで行けるだろう。一昨年の近畿600、昨年の埼玉1000と夜をまたぐ暑い時期に実績あるジャージ、袖口がベルクロで調整できるので腕まくりできて便利ではあるがそこがゴワついて邪魔なのでさほどお気に入りジャージというわけでもないのだが。下はDe Marciのビブショーツなのでジャージはフロントフルオープンファスナーが便利。着替えはアンダーシャツ2枚と靴下(SEALSKINZ)のみ、ドロップバッグはなし。 グローブも指切りのAssosで大丈夫、そろそろパッド部がほつれ始めているな。

ウィンドブレーカは普段用の大して薄手ではないのを持ってきてはあるが、二日目の雨は避けられそうになくカッパを着るだろうからそれも不要だろう。カッパも百均のではなくサドルバッグにいれてあるmont-bellのGORE-TEXをそのまま持って行く。

ボトルに水道の水を満たしてホテルを4時過ぎにチェックアウト、岡崎城をチラっと眺めてスタート地点へクルマを走らせる。とりあえず今日はいい天気だから、しっかり走れそうだ。

到着すると駐車スペースはもうかなりのクルマで一杯で端の方へなんとか停めた。隣りの人と挨拶しつつママヤマを出してきて準備。 先月のフレッシュメンバーと再会し、都合で早退したゆば〜ばさんにフレッシュの景品を渡す。 腹ポさん&べりさんは久々のスイスジャージで気合い十分!今日はとにかく昨年行けなかったトランブルーと焼肉かをるを目指すと。ならこちらは昨年通り過ぎて見損ねた海王丸を見なければね。

昨年と違い準備万端でブリーフィングを聞き、車検をしてもらってブルベカードにチェック貰ったら早めに出発した。

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説明は金井さん

走り始めたこの時点で遅れて出た昨年より25分先行しているので楽勝な気分で土手道を行く。朝のさわやかな空気を肌に感じつつ快調な滑り出しはもちろん昨年より速いペース。

トヨタの町中といえど5時過ぎなのでクルマは少なくてストレスをためることなく通過していく。これが朝7時、8時スタートならそうはいかないところだろう。

川沿いの道 La route le long de la rivi?re

郊外へ出ると集団も少しずつほぐれて来る。しばらくは同じ様なメンバーで行ったり来たりを繰り返す。腹ポさん&べりさん、水色KLEINさん、タケさんとの5人は昨年近畿400でサイスポに登場した面々で今日も走ることとなる。

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後ろポケットのパンが気になる?

向こうに何やらメッセージ持って手を振る人が見えた。確か「 富山へGo!」とか書いてあったか。富山はまだ遠いよ、まだまだ。

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応援!

最初の峠、小原トンネルを頑張って上り、それを抜けて降りていくと”世界最大”の狛犬の曲り角。ここは去年も見たのを憶えているけど、こんなに早く見た気はしない。あっけなく、という言葉が浮かぶ。

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ここからすぐのサークルKで休憩、PC1までちょうど半分という距離だ。トイレ休憩&紙パック珈琲を買って飲み干して出発。今日は水分補給をしっかりしておくことを心がけよう。(6:47-6:53)

コンビニを出てまもなく、後ろからバリバリと乾いたエンジン音が響いてきたと思ったらこんなクルマが。

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今日の天気だとさぞ気持ちいいだろう。このあと道の駅らっせぃみさとに停車しているのを見かけた。

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小さな峠の続く区間に入る。その最後の峠を下って行くと向こうに川が見える。ここからの坂の勾配がきつい。そう、昨年帰る時に急な激坂で閉口したところだ。橋を渡ってすぐ上るところからきつかった。今日は急坂を下りながらその勾配を確かめつつその赤い橋、武並橋を渡っていく。

鏡のような深い緑の川面、しばらく行くと赤い橋がとてもきれいに映っているのが見えたので、立ち止まって撮影。

道路のちょっとした駐車スペースに停まっているクルマがやたら多いなと思ったら、川にはずらっと太公望がひしめいている。今日は絶好の鮎釣り日和、ていうか後から調べたら今日が鮎釣り解禁日だった!

しばらく川は鮎より多いんではないかという釣り客であふれる光景が続く。残念ながら鮎を釣り上げる場面に出くわすことはなかったけど。 彼らの振る10m余りのカーボンロッド、その1/3はSHIMANO製だろう。道路を走る自分達のバイクの半数のコンポもSHIMANO製だ。たわいもないことを考えながら、陽射しを受けつつ快走は続く。

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解禁日!

”晴れた時に走ったら景色はいいのかもしれない”と思いつつ流れる雨粒をさけてうつむき加減で走っていた去年想像していたよりもずっと素晴らしい景色が連なる。同じ道を行く退屈さなんて微塵も感じず、忘れ物を拾っていっているようなそんな気もする。

小刻みなアップダウンが続くともうすぐPCのはずだ。里山の中にポツンとある感じのサークルKがPC1、やはりあっけなく辿り着いてしまった。今年はここでリタイアする人はいない。さあ行こうママヤマ、楽しいブルベは始まったばかりだ。(8:45-8:58)

峠を行く:Nous allons le laissez-passer de montagne

このコース設定、各PCの距離間隔はおおよそ100キロ、次のPC2までの中間点付近には下呂の町があり昼食スポットはいろいろあるが、そこでお昼にすると高山までの間が短いので前倒しした方がいいだろうと、手前の道の駅で停まることにした。それにここからは峠が続くので刻んで進む方が無理はない。

峠らしい勾配に続く塞之神トンネルを越えて降りたところにある道の駅加子母に寄り昼食、といってもまだ10時過ぎだし空腹感はない。食堂は開いていたが軽めのもので済ませようと売店で確か名物の朴葉すしがあるはずだと入ってみる。

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3ヶ入パックがあったのでそれを。新葉と書いてあった通り瑞々しい葉っぱに包まれていて香りは良さそう。

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中には数種類の具がはさんである。おにぎり状の甘いすし飯がちょうどいい。二つ食べて一つはフロントバッグへ入れておいた。

そしてこちらも名物のトマトジュース、無塩のものにしてみたがトマトの旨味がしっかりしているのにさらっとしていて一気に飲める旨さ。なんとなくこれからの疲れを和らげてくれるような気がする。

トイレから出て来るとみんな何か食べていた。ここの道の駅のおにいさんがごちそうしてくれたトマトソフトクリームだ。なんでも峠にはさまれたこの地に自転車が来るのは珍しいので嬉しかったとのこと。思いがけないデザートにこちらも嬉しくなり「帰りも寄りますね」と誰かが云ってたけど大丈夫かなぁ?(10:15-10:33)

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サービス!

補給と応援とで元気満タンで次の峠に向かう。

舞台峠はおよそ700mの標高、登りしろは300mほど。急勾配はないけど先を考えて他のメンバーから遅れ気味なペースに抑えてゆるゆると上る。

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舞台峠

舞台峠の頂上ポイントがよくわからないなと思ったら、小さな木の案内板が茂みに転がっていた。

下りでは先行して飛ばす。先々週おろしたばかりのチューブレスタイヤは好調でよく転がるし、ブレーキの効きもいい感じでママヤマは飛ぶように駆け降りる。橋の手前で停車し写真を撮りつつ後続を待つ。

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下呂温泉街を抜けてアップダウンをこなしつつ里道を走る。この辺りは補給できそうなところはあまりなく、上呂のACOOPか小さな商店くらい。でも走行は快調なのでさっきの加子母からおよそ50キロ先の道の駅なぎさまでノンストップ。

さっき買った朴葉すしを食べる。ここの売店には焼きたてパンがあるけど、目指す高山のトランブルーまではあと峠一つだから買う必要はないだろう。(12:33-12:50)

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道の駅なぎさ

標高は783mと高い宮峠だが前後の標高がかなりあるので登りしろは多くなくて標高150m分ほど、あまり苦労せずにクリアできた(といってもメンバーから遅れてはいるが)。これを下れば高山へ。

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宮峠

R41から外れてトランブルーへ向かう。ところがGPSにはその分岐点は登録してあったもののトランブルーの地点自体の登録を忘れていた。すぐ近くなのに正確な場所がわからず、通りがかりの人に尋ねて回り道をしつつ到着したら、店内にトレイとトングを持っている皆の姿が見えた。

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海:La mer

PC2を出てR41を更に北へ。下り基調と追い風でグングンと加速して目的地?の焼肉かをるまで40分かからず到着。まだ3時前なので「夕飯じゃなくておやつだなぁ」と。

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5人ともロース定食1200円、サシの入った飛騨牛の旨い事この上なし。肉が焼けてからはしばらく会話も途切れ静かに(笑)。普通焼肉屋の味はタレの味に左右されると思うけど、ここのタレの味は記憶に残っていない。肉の旨味が抜群なのでタレの味の印象が薄いのだ。この肉はきっと明日の脚力になるはず、ごちそうさま。おっとこのボトルに水を入れてもらえますか?

全員満腹満足して店を出たところで30分強とあまり時間かからずに済んでいるのもいい。 トランブルーと焼肉かをる、昨年情報を探し出してくれた腹ポさん達は序盤の遅れの為パスせざるを得なかったこの2つのポイントへのリベンジがかない、本ブルベの目的はこれで達成された!(14:50-15:24)

さあこれから今日最後の峠、数河(すごう)峠に向かおう。

っと、何やら足下がひっかかると思ったらまたチェーン噛み込み発生。

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またか...

フレッシュの時と同じトラブル。ディレイラー可動範囲はいじってないからなぁ。

ここでもう上り始めていた他のメンバーとはお別れだなと、落ち着いて自転車をひっくり返してチェーンを抜きにかかる。噛み込みが浅かったのか、今日はすんなり外れてすぐに直った。 ティッシュで軽く手の油汚れを拭き取って再スタート。と、向こうに待っている人が見えた。どうやら心配して戻ってくれたらしい。いやすみませんすみません、復帰しましたよ。(15:24-15:29)

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カラフルな色分け車線

国道なので勾配はさほどきつくなくて5%未満、時折現れる登坂車線で7〜8%あるかというところ。それでも他のメンバーのペースに着いて行くには脚力不足、心拍を160前半までに抑えていると次第に前が小さくなっていく。

そこはしかし慌てず自分のペースを乱さず、GPSの標高表示と地図をにらみながら峠の天辺を目指してペダルを漕いで行く。脚が攣らないように太腿や脹脛に水をぶっかけて冷やし、首筋にも水をかけて上る。ギアはフロントインナー、30x21か30x23でケイデンス70前後で上る。

頂上付近に来ると勾配がゆるくなってきた。ギアを上げて少しスピードを戻していくと前方との差が縮まってくるのがわかる。下り始めまでに追いつけるか?

と、左手の広い駐車場で数台のクルマが停車しているのが目に留まった。どうやらその奥に湧き水スポットがあるらしい。前を行くグループはその事は知っているはずだが、よく考えると「ボトル+水」を使っている人がおらず、水を汲む必要がないので通過していった。まぁしかたない、こっちはボトルの中身もあと少しなので給水していかねば。

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数河峠

どうどうと惜しげも無く流れ続ける湧き水をぐいっと一口飲んでボトルを満たし、さあこれで今日のシゴトはほぼ終わり。あとは富山までひたすら下りだ。(16:11)

先行の4人に追いつけるか?途中ペースの合う人がいたので後ろにつき、さあかわして行くかなと思ったらどうも向い風がやってきた。そのまま後ろ付き位置のまま進む。

昨年の風景を憶えている神岡の辺りは短い平坦と僅かの上りを交えつつの下りとなる。スノーシェルターが続きクルマも時折通るので後部ライトは点滅させたまま走り続ける。

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道の駅細入まで降りてきたらやっぱりもう到着していて休憩していた。こちらも自販機で缶コーヒーを買い、さっきのトランブルーのおやつをいただくことにしよう。

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道の駅細入にて、デコポンのペストリー

トランブルーでも人気商品らしいデコポンのペストリー、爽やかな甘味に疲れが溶けていく。

時間はまだ5時半になっていない。PC3まで45キロほどだから7時半くらいには到着かな。もしかしたら海王丸は明るみがなくなる前に行けるかもしれない、などと話す。 仮眠予定の健宝の湯には当初PC3に行く前に寄って仮眠時間を稼ごうというプランだったが、ここに来て時間が早すぎて今から仮眠しようにも眠たくないだろうからPC3を回った後で十分だということになった。(17:08-17:27)

再び5人でPC3を目指す。先頭は水色KLEINさんが豪快に牽く。

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ふもとに降りて来ると追い風気味に戻り、スピードも乗ってどんどん市街地に近づいていく。

途中左折ポイントを直進してミスコース、すぐにわかったので停止したが先行メンバーはぐるっと回って隣の橋を渡って復帰。それはそれでなかなかいい画になった。

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ミスコースも楽しむ

射水市内に入ってもまだ明るい、日が暮れていない。となると目的はPCよりも海王丸へと移っていく。

PC3に到着するも、買い物済ませたらすぐ出発。買った飲み物は海王丸を見ながらだ。(18:51-18:55)

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PC3セーブオン

ここからあと3キロほど、沈む太陽と競うように漕いで漕いで漕いで急げ!

そこを左!右へ曲がって...間に合った!見えた!

「お〜〜〜」全員が思わず歓声を上げた。
べりさんなど半分涙声になってる。想像すらしなかった明るい情景の海王丸に出会えたなんて信じられない、それは皆同じだ。昨年見そびれた海王丸は堂々としていて精緻でそして美しかった。ブルベの折返し地点でこんなに感動したのは初めて。完走した時以上かもしれない。

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皆それぞれに海王丸をバックに写真を撮る。

そしてベンチに腰掛けてさっき買った飲み物とトランブルーのパンをいただきながら談笑。
ここまで300キロを14時間と13分、サイコンの平均速度表示26.2km/hというスピードをもたらしたこのメンバー、そして5月22日の日没時刻18:57という条件があってこその景色。もう二度と会えないかもしれないこの機会を一期一会とかみしめながら、白い船体をいつまでも眺めていたかった。
”To See The Sea”ここに至れり。(19:04-19:15)

『さあ、帰ろう。』

富山湾に別れを告げて復路に着き、別の地点に荷物を預けている腹ポさん達と途中で分かれ、水色KLEINさん・タケさんの二人と健宝の湯へ向かう。
先客は一台、これはユタさんのバイクらしい。

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健宝の湯

温泉で気持ちよく汗を流し休憩室でしばらくリクライニングソファに横たわる。テレビの音声が漏れ聞こえて来るのが気になるし時間も早いしで眠くはならないが体の火照りはスーッと鎮まっていくのを感じる。

小一時間休んでから更衣室へ戻るとやってきたばかりのinainaさんやゆば〜ばさん達と出会った。明日は未明から雨で気温も上がらないから防寒を、とアドバイスを受けて一足お先に失礼。

すぐ隣りのサークルKで二人の荷物の送付と補給を済ませ、また一緒に夜の道へと走り出した。

(後編につづく)