銀河サイクリングの夜 − 第三夜

▽夜明け前

なかなか寝付けないまま時間は過ぎていく。そうしているのが無駄に思えてきて、予定より早いけどここを切り上げて先へ進もう。眠くなるだろうがその時はその時でしっかり休めばいい。この先はPC6をクリアしさえすれば時間の猶予はたっぷりある。

昨夜よりは気温は下がるだろうからインナーを吸汗発熱タイプ=冬用に変える。メットの下にキャップも被って防寒。もちろんウインドブレーカも着て。

ただ、一つ問題があった。
それはありがちなお尻の問題。既に過去最長距離に達しているのだが、過去2度の600の時よりお尻が痛くなってしまっていた。風呂に入って少しマシになっているとはいえこの先まだ長い。
とりあえず館内着の下に履いているトラベル用使い捨てブリーフを履いたままにしてその上からCW-X+レーパンを履いてみた。少しいい感じか。

そうして当然まだ真っ暗の健康ランドを出発した。(9/21 21:23-9/22 2:38)

最寄りのサークルKでサンドイッチを軽く食べて、ボトルに給水。もうPOCARIの味には飽きたので、好みの味であるDAKARA ProteinWaterにしようと思ったらなかったのでカルピスウォーターを。

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本コースに復帰して時間をチェックすると、予定と10分も違っていない。早めに出たつもりだったがこの差だとオンタイムだ。

真っ暗な中をライト3灯点灯させて進む。やはり雲がかかっているので星はあまり見えない。
ペースは悪くなく、GPSの予定時刻をじんわり離していって10分程度の貯金をもって走っている。
横手の市街地を抜けると谷の間に出た様だ。ここからごく緩い登りが続く。道路気温表示は14℃、でも寒さは感じない。
昼間だとさぞ気持ちのいいだろう道を黙々と進む。前方に後尾灯が見える。誰か走っている。

バックライトを点灯させているGPSには地図/ルート案内と合わせて現在時刻と速度を表示させているので、ペースがわからなくなるということはない。ヘルメットにはミニライトをつけているがこれを点灯させるとメガネに反射するのかまぶしいので、必要があるときだけ点灯させることにして普段は消灯していた。ハンドルにも小型LEDライトを下向きにつけてあり、これはボトルを出し入れする時にそこが見えるように点灯させている。

およそ1時間半走ったところで「道の駅さんない」で休憩。ボトルにはまだまだたっぷり残っているが、他のものを飲みたくなった。そろそろ夜明けの気配がしている。
更に40分後に自販機休憩。明るくなっているが逆に眠気が頭をもたげてくる。温かい缶コーヒーを飲み気分転換。

前方に走っている一人の後ろに近付いたり離れたりしながら早朝の谷間の国道を走る。曇っているせいもあるのだろう、空気は重たい感じがする。それとも体が重いのか、それともまぶたが重いのか。

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PC6まではあと20キロもないが眠気をおさめようと「道の駅錦秋湖」へ。
ここへは何名かがいて休憩していた。休憩室が開いていて中は温かくて快適だったからだ。

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休憩室のベンチにしばし横たわる。眠れるわけではないが少し楽になって眠気も引いてきた。
ウィンドブレーカを脱いでさぁ進もう。

錦秋湖の景色を右手に眺めながら下り基調で軽快に走る。 平地にやってきて直線道路に入り、久々に信号を見る。東北道の高架が見えたらPCはすぐその向こう。
予定より5分ばかり遅れてPC6に到着。トイレにいって股のところのゴムが細くて逆に痛くなった使い捨てブリーフを破り捨て、”最後の手段”シャーミークリームをたっぷり塗ってみる。ん、この方が行けそうだ。
給水にDAKARA ProteinWaterを買って外に出る。

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この写真を撮った直後に気がついた。”カレラ?エストレモ!腹ポさんか。隣はべりさんのオルカか。”
夢の中で別れたカンパネルラに再会した?!、と「銀河鉄道の夜」の話とは違う展開にこじつけてみる腹ポさん&べりさんとの再会(余談だが彼らはCampagnolo使い)
おととい早々に別れたきり昨日は一度も会わなかったのに、こういうことがあるのが超長距離ブルベのおもしろいところ。 「5時間寝ました!」と元気いっぱいのべりさん。ウラヤマシイ〜

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朝食を摂るタイミングなのだけどここはさっきのレシートチェックの為の買い物だけで先へ進む事にした。しっかり食べたいので牛丼を探そう。北上の街中なのであるはずだ。牛丼、牛丼。。。
PCを腹ポさん達と一緒に出たのだが、右折して南下すべき交差点を一人直進して別れ、賑やかそうな通りを探してみる。
せっかく出会ったのに牛丼で別れてしまうはかない絆。
が、そこに牛丼はなかった。
本線に戻ってみると、ばったり出会ったのはゆば〜ばさんとこの方。

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”この眠たい時に羊の絵はまずいすよ。羊が一匹、羊が二匹。”
と朝からAbさんに失礼なご挨拶。しばらくこの二人について走らせてもらった。
郊外の道を快調に走る。ディスクホイールがポコポコ楽しげな音をかなでている。 ¥

途中高速道路案内表示板に雨天のため80キロ速度制限と出ていた。横手〜北上では雨が降っていたらしく、うまくそのタイミングをやり過ごした様だ。

先行していた腹ポさん&べりさんがウインドブレーカを脱ぐため停車していたところを追い抜く。結局今回はここで会ったのがブルベ中では最後であった。

快走する列車の後ろについてしばらく走っているうち、水沢市街地に入ると前方に「吉野家」の看板が見えた。”あそこに寄ります。ありがとうございました。”と惜しくも列車を離脱。
さっそく店内に飛び込み並と玉子を注文。玉子を加えた方が早く食べられるしたんぱく質もしっかり補給できる。

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エネルギーをしっかり補給して出発。ここでの停車は423秒、コンビニで弁当食べているより早い。(8:43-8:50)

遅い朝食の後しばらく一人で走っていると前方にパニアバッグをぶら下げたバイクが。ブルベ参加者ではなく長距離旅行かな。坂で追いついて聞いてみると、今日は仙台まで行くとのことだ。行き先はほぼ一緒だねと云おうとしたら歩道から外れ商店の駐車場の方へ向かわれた。

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幹線道路なのでクルマはよく通る。こういう道は馴れているとはいえ危険度は高いので緊張感を保って走る。おかげで眠気はどこかに行ってしまった。
ふと左手を見ると、ガードレールの向こうにある小さなゼブラゾーンで人が倒れている。その隣にはロードレーサーが横倒し。クルマに跳ねられて倒れているようにしか見えないけどそれは仮眠中の人なのだ。アスファルトの上は実は温かくて寝心地がいいから、仮眠は昼に取るという話を聞いた事があるがまさにそれ。
わかってはいてもしかし、ブルベの壮絶な一面を感じさせる光景だった。

▽奥の細道ブルベ編

そろそろ平泉に入る。
平泉といえば中尊寺。芭蕉の句

五月雨の 降残してや 光堂

で有名な中尊寺だ。ここへ立ち寄るのが今回のミッションの一つ。
ルートはR4バイパスを通るので、その途中から中尊寺へ出る道へ外れていく。線路を渡ると駐車場待ちのクルマの列が長々と続いていた。その横を尻目にさくさくと坂を登って、上の方の駐車場脇に自転車を置いて散策開始。

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金色堂の手前にあるこのお堂は何かわからない。が、石段の上にあり木立の中にひっそりとあるそれは個人的に金色堂のある風景のイメージぴったりだった。無論金色堂は昔より覆堂の中にあったのでそれは違うのだが。

金色堂の拝観は讃衛蔵と会わせて800円、ここまで来てビビってはいられない。
なるべくカチャカチャいわせないように静かに歩を進めて、今はコンクリ造りの覆堂の中へ。

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中の金色堂は撮影禁止なので画像はなし。金閣寺を彷彿とさせるきらびやかな建造物は、ここが正に”都”であったと疑う余地がないほど。

外を回って芭蕉像のあるのは旧覆堂。

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少し降りてきて不動堂。後でみるとお地蔵さんの頭巾と前掛けの赤とお姉さんのワンピの色が見事に合っている珍妙な構図。

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ついでのようだがこちらが本堂。

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お土産に交通安全のお守りを二つ買って戻る。何か名物っぽい食べ物も食べたかったが、時間も少しよけいに費やして気になるところだしスルーしてブルベ本コースに戻り、再び走り始める。(9:35-10:15)

まもなく一関だが、左手に広がる田んぼの辺りは

夏草や 兵どもが 夢のあと

の舞台なんだそうだ。夏草はもう済んでしまったが、兵どもはまだまだ夢を追って道を走り続けている。

▽本日の旧車

ここで本日の旧車コーナー、ポルシェ356。

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BGMは「プレイバック Part2」でどうぞ。
新車と見紛うばかりの美しさ、曇り空ながら風景がボディにホイールキャップに映り込んでいる。
画像の車列の後に続いて左折していったので少し後を追って軽やかな排気音を聞かせていただいた。

▽PC7

さて中尊寺では結局補給も何もなかったので、道の駅ではないけど広い駐車場のあるトイレ施設に寄道、ここにはファミリーマートも併設されてたので都合良し。

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ファミマでは結構補給する。甘いものが欲しくなっていたのでロールケーキ一切れ。これ大手の製菓会社の商品ではなく、地元の手作り風商品。加えてチーズケーキスティックも買ってそれは予備食に。(11:17-11:34)

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沿道では昨日から田んぼでは稲刈りの風景が続いていた。秋田もそうだったけどここらでははぜ掛けが棒を一本立ててそこにかぶせるように重ねてある。愛地球博のマスコット”モリゾー”の収穫バージョン色みたいだな。
にしてもこれだけ並んでいると壮観。

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幹線道路のR4を走り続ける。多くの人はここはクルマが多く怖くて嫌だったと言っていたが、あんまりそんな風な印象はなかった。時々通る総社から高梁に至るR180の方がよっぽど緊張する。
Qシートにあった健康ランドを通り過ぎて(ここではなくワタリの温泉に入ろう)と先へ進むとGPSは左折を示す。ここから幹線道路を離れ「大豆坂」とキューシートに書かれている区間に入る。いきなり短く13%ほどの坂を越えると里山の緩やかなアップダウンの道になる。クルマはあまり通らないこの道は誰かのトレーニングコースか?と思ってしまうような気持ちのいい道(しかし脚には堪える)。現に前から2名ほどローディがやってきてすれ違った。 東北道大和ICをかすめていくとまもなくPC7に到着。
常駐ではないだろうけどスタッフの方が待機しておられた。ブルーベリーをいただく。昨日朝一緒だったeiryさんとも再会。

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水分補給をしてリカンベントの後に出発。(13:55-14:12)

▽松島や あゝ松島や 松島や

PC7を出発して山手の団地を降りると次のミッションが控えていた。
これまで宮島(昨年)、今年は天橋立(今年)とママヤマで訪れている。

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あと松島を押さえれば日本三景コンプリート。普段遠すぎて行けないその場所に接近している今日はその大チャンスだ。片道13kmほどあるが...予めGPSにはルート登録済、行くしかない!

利府の交差点を右折するところを直進して跨線橋を越える。そのまま住宅地の中を進んで丘越えし、塩竈市街地を抜けて海岸線を走る。アップダウンを越えていよいよ松島へ。

小さなトンネルの前からクルマが渋滞している。歩道は人でいっぱいだ。
通りに面したところに牛タンの店「利休」があるのが見えた。昼の営業は3時までなのでもう閉まっているはずと思ったら開いている様だ。ラッキー!と思ったその直後、店の前に立てられたテントに待ち客が15人はいたのが見えた。これでは諦めざるを得まい...

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松島のシンボル、五大堂をバックに一枚。よし、これで日本三景全て到達。思えばここには昔会社の出張で仙台に来た時に連れて来てもらって以来。ずいぶん賑やかになった様ではあるけど、島々の景色はあの時見たままだ。

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牛タンは諦めたので代わりに牡蠣カレーパンなぞ。パンを割ってみるとカレーの中に牡蠣が。

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これはなかなかイケてるB級グルメ、ごちそうさま。
辺りをぶらぶらと散策して、帰り道に双観山に立ち寄る。

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高台から沖に小さな島々が連なる風景が楽しめる。瀬戸内の風情とはまた異なる多島美。
そこから少し降りて、歩道に停めて間近の島をバックに。

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元来た道をトレースして分岐点に到着、ブルベに復帰した。(14:47-16:44)
2時間近くかかり予定より20分ばかり遅れも出したが、満足した寄道だった。その道中はなぜかブルベの事は頭を離れて地元の玉島の海岸線でも走っているのんびり気分でいられた。惜しむらくはルートに戻った途端お日様が出てきて明るくなったこと。もうちょっと早く出てきてくれたらもっと陰影のあるいい景色に出会えただろうに。

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▽快走

しばらくは平坦路が続く。多賀城市をかすめてキリンビール工場を横目に南に進路を変えるとスピードアップ、追い風だ!

クルマはそれなりに通るものの道は空いているので十分間隔をあけて追い越してくれる。トラックが抜いて行くとその風圧で押してくれる。弱い追い風を受けて30km/h越えて巡航。850kmをこなしてなお30km/hを軽く越えて走れるのが楽しくてたまらない。

”いっちょやってみるか”

とトップギアに入れて下ハン持ってアタックをかけてみる。腰を浮かせて42,45,47,48km/h...ここまでで脚を緩めた。脚はまだ回転できるのだが既に握力が抜けかけているのを自覚していた腕がハンドルを支え辛くなっているのがわかったから。「シャカリキ!」で山頂直前で腕のケイレンのため落車し山岳賞を逃したハトムラを思い出す。そうか、上半身ねぇ。

その後も調子良く飛ばしていたらするっと地下道に入った。しまった!ここは仙台空港をくぐる地下道だ。
事前の注意事項やブリーフィングでも、ここの車道はセンターライン上にポールが立っているのでクルマが自転車を抜きにくく走り辛い為歩道走行を勧められていたところだ。
入ってしまって戻ることはもうできないのでしかたない、ペースを40km/h近くまで上げて駆け抜けようとする。幸いクルマは来ていない。出口への登りスロープで失速する横を乗用車が特に邪魔になるような感じもなく抜けて行き、地上に戻れた。金属音が響いている中、振り返ると旅客機が離陸していた。

▼はらこ飯

夕暮れの田園地帯を進み、大きな亘理(わたり)大橋を渡ったらルートを外れ鳥の海という名前のついた入江の方へ向かう。
ここらの名物「はらこ飯」を夕食にいただこう。立ち寄った店はこちら「あら浜」。

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今風に直したカジュアルな和風ファミレス風の寿司屋という風情の店で今は「はらこ飯」が、10月を過ぎると「ほっき飯」が名物。今日ははらこ飯をいただいた。
だしで炊いたご飯の上に、煮付けた鮭といくらが乗っている。鮭といくらの親子丼というのは食べたことあるけど、炊き込みご飯であることと鮭が煮てあるのは初めての体験。

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ほっくりした鮭とプツプツとしたいくらとの食感の違いが楽しい逸品。今回のブルベ中No.1のごちそうさま。(18:31-19:01)
これは家でも再現できそうではあるが、材料費は高そう。

この後は「わたり温泉 鳥の海」へ行ってさっぱり疲れを落とし最終ステージに向かう予定であったが温泉はパスした。まだ脚にも腰にも不安はなかった(昨夜のマッサージが効いている)ことに加え、予定が遅れているため眠気の避けられない苦手な時間帯(2〜5時)にすっぽり入ってしまうからである。健康ランドではないので一眠りできるほど営業時間も長くない。

あら浜からすぐ近くのファミマに寄るだけ寄って、ボトルに水分補給してコースに復帰。(19:04-19:18)

▽最後の銀河サイクリング

お腹一杯になったところでゴールまで120キロほど、あとわずか??
既に辺りは真っ暗になり、あいかわらず雲で星は見えないけれど最後の銀河サイクリングを楽しもう。

しばらくは平坦路が続き、さっき程ではないが悪くないペースで進んで行く。
やがて小さなアップダウンが来ると海沿いルートを離れ内陸を通るルートになる。
相馬市のはずれにあるコンビニがPC8。

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数名の参加者が休憩していた。時間的には急ぐ必要もないので、しっかり休んで水分補給をして出発。トイレに入ってシャーミークリームを追加しておく。(20:41-21:07)
ここからはゴールまで細かいアップダウンが続いているはずだ。
勾配はそうきつくない坂を越えて少し下り、また登っては下る。
このパターンは近畿ブルベで体験済み、アチラの方が坂がキツかったはずだ。ここの程度ならあれに比べればまだマシ。 そう思ってペダルを踏む。
少し前から踏み込む度にギシギシ音を立てている。ペダル軸が緩んでいるのか?(後日チェックしたら1/8回転締められたのでその分緩んでいた)

緩んでいるのは体の芯の方。眠気が力を抜いていく。PC8から30分足らずで自販機にて停止、補給というより眠気覚ましの気分転換に。(21:37-21:40)

名古屋の時と同じ様に登りで眠気が襲ってくる。そしてまた30分で同じ様に停止。(22:04-22:07)

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コンビニが見えたのでトイレ休憩を含み補給を。(22:48-22:54)

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あまりに短い補給間隔なので腹には何か入る余地がもうないほど。エネルギーも消費していないので減らない。ボトルもまだ追加は要らない。何を補給したいのか、それは睡眠だけなのか。 繰り返すアップダウンの道を再び走り始める。

ケイデンスはもうすっかり落ちていて回転で登るというわけにはいかない。5%を越える勾配だと腰を浮かせて立ち漕ぎで登る。それはいいが、サドルに腰を降ろす時に尻痛が堪える。軟着陸よろしくそっと腰を降ろして座り位置をゆっくり確かめて、それから漕ぎ始める。

やっと最後のPC9に到着した。あとは35キロほどしかない。普通なら一気に走れる距離ではあるが。
まずは仮眠を取ろう。コンビニの壁にもたれかけてしばらく目を瞑っていた。 少し眠れたのだろうか。
起き上がってゆっくりと店内に入り買い物。レシートはしっかり持って、これまでのところと同様にセロテープをもらってブルベカードに貼付けておくことだけは忘れない。
UFO焼きそば大盛りを食べる。

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ふと横を見るとノラ猫が寄って来ていた。

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何匹かいるようだ。ここでおこぼれを頂戴しているのだろう。

さぁ、気を取り直して、シャーミークリームの残りを全て使い尻痛をこれで我慢してあと35キロ。
よく見るとハブ軸に取付けているライト:EL530が暗くなっている。ライトが暗いとそれで眠気は増長される。予備の電池を出して来て交換して明るさを取り戻し、最後のロードに向けて走り始めた。40分以上休憩していたのでGPSの予定時刻とは1時間以上差がついているが、ここまで来ていればもうそれを気にする必要はない。(9/23 0:09-0:56)

▽再び海へ−ARIVEE

普段は買わないガム、ミント系のクロレッツを眠気覚ましに買ってみた。
ミント自体は弱いのであまり効かないが、口を動かして噛んでいることはいい様だ。
道は相変わらずアップダウンが続く。

下り、前方交差点、青信号通過、登り返し、右カーブ、左に自販機...

左手の薮の中からガサゴソと音が聞こえる。ベルをキンキン鳴らして動物除け、いやむしろ自分の眠気覚ましか。
登りはインナー、下りはアウターとフロントギアも切替えが頻繁でシフトの切れがなくなってきたと感じていたが、切れがないのはメカのせいではなく操作する左手の力が抜けているせいだった。

下り、前方交差点、青信号通過、登り返し、右カーブ、左に自販機...

先ほどと同じシチュエーション、デ・ジャ・ヴ。同じところを回っているのではないか。

このくらいのアップダウン、この時間のアップダウンは近畿400で体験済み。暴風雨の後の昨年の400のあの時の方が辛かったさ。
同じことを繰り返し念じて坂を登り、そして下る。

空を見上げると相変わらずの暗い曇り空、星は見えないけれどその雲のおかげか寒さはない。最後まで天気が持った、この長距離で雨に降られなかったのは幸運としか言いようが無い。
ケイデンスは落ちて平らなところでも70そこそこ、心拍は110。上げようにも上がらないけどまだ止まりはしない。

GPSのポイントは確実に先へ進んでいる。そのデータを信じて。
ギシギシ言いながらもなおも走り続けるママヤマを信じて。
ここまでやって来れた自分の脚を信じて。
文句を言わず送り出してくれた家族、ネットで応援メッセージをくれた友人を信じて。
様々な身の回りのことを信じてその力を借り、いろんなものを背負ってペダルを回し続ける。眠くて辛いけど、まだ脚は止まらない。

もう何十回とあった下り、だが今度は少し長い様子でどうやらこれが最後の下りの様だ。フロントギアをアウターに入れてリアもトップに入れて少し漕ぐ。下りは得意なんだ。そう思うと眠気は少し収まる。下りは好きだけど落車したこともあるんだから気をつけろ。

どんどん下りながらスタートしてからの風景が頭の中を巡っている。あと少し。

再び海沿いの国道6号線に出た。港の灯りが見えている。
波の音を聞きながら、ゆっくりと進む。ザーッ、ザーッというその音は1000キロを完走して迎えてくれる拍手の音か?と思ってみると”んなアホなことを”とふと笑みがこぼれる。

ゴールの健康ランドが見えた、ここだ。左手を真横に上げて左折の合図をし、パチンッとクリートを外して灯りが見えている方へ向かう。GPSが最終ポイント到達のアラーム音を発する。

そしてママヤマから、降りた。よく、やってくれた、とポンとサドルを一つ叩いて。

他の参加者のバイクが重ねて置いてあるところへママヤマも置き、サドルバッグの荷物を持って最終ゴールチェックを受ける。

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そこにはPC7で会ったeiryさんがおられた。数分前にゴールされたとか。

こんな時間にも待ってくれているスタッフにもお礼を言って、お土産に中尊寺の交通安全のお守りをプレゼント。中尊寺に寄ったのにえらく驚かれてしまったので、その後松島に寄道したことはつい言いそびれてしまった(苦笑)。

健康ランドに入ると、ロビーでは腹ポさん&べりさん、ゆば〜ばさんがくつろいでいた。遅い帰還報告をして風呂に入り、上がってからも少し歓談。話は尽きねどもまずは一寝入りしましょうと、仮眠部屋に向かった。

6時過ぎに再び気持ちよく目覚めるまで意識なくぐっすり眠っていた。昨夜までは眠ろうとしても眠れなかったのに。

(本日の走行:405km 累計1058km 出走138名完走114名)

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◆あとがき−1000キロを走り終えて

一言で言うと本当に幸運な1000キロでした。
まず雨が降らなかったこと、これが一番大きい。
そして総勢138人という大人数であったことが、これだけの超長距離なのに誰かと出会う確率が意外と高く感じられ、気持ちの面で大いに支えられました。
次にもし1000キロ走る機会があったとしても、今回ほど楽なことだと思えることはないでしょう。そういう意味でも参加して本当に良かったと思います。
そして様々な人に出会えた事−名前を聞けなかった人も含めて−も大きな収穫でした。自転車の事、装備の事、休憩の事、いろんな事を学ばせていただきました。自分に足らない事はいっぱいあるのがよくわかりましたし、逆に自分のできる範囲でやればそれでいいしそれでも走れるのだという自信もつきました。

細かく見て行くと初日は向い風、これに序盤でかなり消耗させられましたが、その消耗度合いが思ったよりひどかったことがラーメン屋で休むまで自覚できていませんでした。あそこでじっくり休んでいなければそれに気付かず、その後の坂でより早く脚の痙攣が出ていたかもしれません。ペース配分とわかっている一言の重みを再認識させられました。
ビジネスホテル泊という条件のよい仮眠であったはずがそれを活かせなかった=睡眠がうまく取れなかったのは後々迄尾を引きました。ここが自分の弱点の一つ。短時間でもスッと深い眠りに入れたら回復はぐっと確かなものになるでしょう。

食事は、朝はコンビニでサンドイッチが多かったです。少しでも野菜類がとれるようにと心掛けました。
”出す”方も今回はなんとか乗り切れたというところです。すっきり出し切れたらもっと楽にもなったでしょう。

ドロップバッグ(途中の地点に必要な荷物を送っておいて、着替えや装備の交換・補給の追加等を行う。)は、今回主催側での実施はありませんで、必要な人は任意の中間地点に荷物を送りつけていました。過去600の時は2回ともドロップバッグを行いましたが、今回はあえてそれをせずにやってみて、特に不足なく走り切ることができました。一つには雨の予報がなかったので雨具を百均の簡易カッパを持つだけで済んだ(それも使用せず)のが大きかったですが、気温を想定して必要と思われる衣類を節約できたのが収穫です。もちろん途中新潟のホテルでコインランドリーで洗濯する作戦も奏功しています。持参した中では長袖吸汗発熱インナーと予備レーパンが未使用となりました。

走行ペースのコントロールはGPSに登録したウエイポイント毎の通過時刻と現在時刻の比較で行いますが、設定がシビアだったのか貯金があまりできない状況が続き、気分的に切羽詰まった感があったのは良くなかったと思います。序盤は向い風でペースが上がらなかったことに加え信号が多く、その信号での停車時間が想定より長めでした。後半は疲れで条件がいい道でも走行ペースが落ちて、それは想定していたペースダウンより落ち方が大きかったです。

600キロを過ぎてから出て来た尻痛は、擦れによるものです。シャーミークリームで何とかしのぎましたが、もっと早めに使っておけば苦しまずに済んだかもしれません。サドルのポジションも微妙に調整が必要なのかもしれませんが、普段は何とも無いので安易に動かすのも難しいところ。
身体の異常、その他では手の握力が抜けました。特に左手の症状が長引き、二週間経ってもまだ握力が回復しません。ブラケットを突っ張るような持ち方をしすぎていたのでしょう、そういう風にならない様に肘を軽く曲げて気をつけてはいるのですが。
足はといえば、初日前半の登りで痙攣しかかったもののその後回復して最後まで異常は起こりませんでした。膝が痛むこともその気配がくることもありません。疲労は太ももの後ろが一番、次にその前側に残り、ふくらはぎに疲れは残りません。
腰は初日は何ともなかったのですが、二日目に小さな登りを越える時に腰痛の気配が出ました。それは健康ランドで整体マッサージを受けてよくなり、三日目は更にアップダウンがあったにもかかわらず腰を気にする事がありませんでした。マッサージをしていなかったら、最後のアップダウンで苦しんだかもしれません。

総じて多少の違いはあったにせよ、予定からそう大きく崩れることなく完走できたのに十分満足しております。

最後に、この機会を与えていただいたオダックス埼玉スタッフの皆様に感謝の意を表したいと思います。