銀河サイクリングの夜 − 第一夜

▽旅立ち

朝5時10分起床、さっとシャワーを浴びて着替え、昨日買ってきていたパンのうちミニクロワッサンを二つ食べてあんドーナツはバックポケットにつっこむ。
POLARボトルにはPOCARIを入れて荷物を整理してデイパックを背負い、ここからはロードシューズでホテルの部屋を出る。6時になったらホテルの朝食サービスがあるのだがそれをいただいていては間に合わなくなるので5時45分にチェックアウト・出発。

スタート地点付近のローソンでトイレとGPS用予備電池を買って受付会場へ行くと、もう腹ポさん&べりさん、ゆば〜ばさん始め近畿勢はもう集まっていた。
ブルベカード記入を済ませてオダックス埼玉オリジナルのブルベ用反射ベストを購入、今回はこれをつけて走ろう。

ひんやりとした清々しい朝の空気の中、スタート前の和気あいあいとした雰囲気で和む。
今回も注目を集める近畿のMさん、ここまで補給食積載したのは初めて見た!
みな「おぉ〜〜〜ぉ」と感嘆の声を上げつつカメラを向ける。「こんなとこまで貼付けてるのか」といいつつもきっと誰も真似をしないよなきっと。
右チェーステイ以外には何かしらくっつけてあるし、ハンドルのドロップ部に手前方向に向くような小型ライトは何だろう?、ハンドル中央にあるのはコマ図描いた単語カードかな。

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そろそろスタッフによるブリーフィングの時間、さっきのあんドーナツをほおばりながら話を聞く。今回はエントリーが150名を越える大人数だった為、7時出発と8時出発の2組に分けられている。私たちは7時出発組だ。

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デジカメのレンズが汚れててゴミだらけの画像で見苦しいけどその様子。

ブリーフィングでスタッフが「今回1000が初めての方どれくらいいらっしゃいますか?」と訊ねると手を挙げたのはおおよそ半分くらい。てことは半分は1000経験者なんだと逆に驚く。後で出走リストを確かめると2007PBP参加者が30名以上いることがわかった。改めてブルベの達人の集まりなんだと、そんな中に紛れ込んでいられることにワクワクした。
事前に「今回は全国から猛者が集まるブルベ”変態甲子園”だ」などと悪口叩いていたが正にその通りだった。

車検を済ませたらいよいよ1000キロへのスタートだ。”パチンッ”という特徴あるクリート音があちこちで響いている。”あぁTIMEのペダル使っている人結構いるなぁ”と自分も同じ音を立ててゆっくりと走り始めた。

▽DEPART 台風14号の余波

最初は浦和の街中を通るので信号停止が多くスムーズには進まないからのんびりとウォーミングアップ、もしくはウェイクアップで進む。これから1000キロを走るのだ、という気分の高まりはあまりない。というよりも1000キロ先は遠すぎて思い描く事はヤバすぎる。せいぜい今日の到達点新潟、いやまずは120キロ先のPC1を目指そう。最初のPCが100キロ以上先っていうのも今迄経験したことなかったこと。というより普通それだけで一日のサイクリング終わる距離だ(笑)。

ところで一週間前から南方海上に発生した台風14号、大型で強力な台風が今回のブルベにどう影響を及ぼすかを天気予報見ながら心配していたが、本州へ上陸することなく天候も荒れる事無く通過した。
本州の東を通過したということは、反時計回りに風を吹かせる台風だから北風になる。注意報が出るような風速15m/sに達する強風はないが、相応の北風がどうやらお出迎えの様だ。

少し開けた場所にでると向い風の洗礼を受ける。小集団で走っているので先頭でなければまだマシだが、何かの拍子で5mも間隔が開くとぐっと抵抗が大きくなり、ぐぐっと力をこめてペダリングして前に追いつかなくてはならない。
たまに先頭を牽いてみると25〜27km/hがいいとこ、それでも心拍は150に上がっていて長く続けられるペースではない。

スタート後1時間あまりの頃。まだ信号が減らない区間なので集団はまだばらけずに、その人数が増えたり減ったりしている。

40キロを過ぎて最初の補給に停止、予定通りのコンビニ。(9:45-9:51)
ここでささっとトイレに駆け込んでPOCARIを買ってボトルに移していたら、「お先に〜」と腹ポさん&べりさんは先に出てしまった、早っ!飲み物買っただけだったのか。それに彼らはPETボトルを飲み口差し替えで使っているから中身を移す必要がない分手間がない。
この後はゆば〜ばさんと一緒に先へ進む。「追いかける?」と問われるが「止めとく」と答え、向い風の中を無理しないように。

前を牽いてない時は楽にはなるがそれでも心拍は130後半、苦しい向い風だ。方角的には新潟県に入るまで同じなので200キロほど同じ向い風かと思うとさすがに気が滅入る。
徐々に気温も上がっていくので水分消費も増える。途中高崎の踏切前で自販機で補給停止したためゆば〜ばさんとも切れてしまった。(11:33-11:34)
単独で走ると25km/h出たり入ったり。GPSのペースとほぼ同等で時間的余裕は生まれないまま距離を重ねる。いちおう向い風を想定して平坦でもペース落として設定していたのがその通りとなったわけだ。

▼いち林飯店〜PC1

12時を過ぎてそろそろ昼食の時間になってきた。PC1のコンビニは人が多いだろうし何よりコンビニでメシにするのは性に合わない(笑)。

予め目星をつけておいたのは渋川伊香保IC近くの「いち林飯店」というラーメン店。ルートからそこへ曲がるところに「すき家」があり、こちらの方が時間的にはぐっと有利になるけどなぁと思いながらも、予定通り進んでいるので300m東のラーメンに向かった。
お昼時だがそれほど混雑してなくて、大きなテーブル席についてすぐ塩ラーメン+味玉を注文した。
テーブルにあるウォーターポットからコップに水を注いで飲み干す。あっという間に5杯飲み干した。まだ息は整っておらず、汗もにじみ出る。先客にまだラーメンが出てないようなのでちょっと時間かかりそうだ。フロアにはお姉さん方が数名おられたが厨房には二人?ちょっと手が足りないのかも。

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待ち時間はあったものの出てきたラーメンはしつこくないけどダシの味はしっかりしている逸品。この塩味がヘタった体にも嬉しい味で、時間をかけて来た甲斐があって満足。ごちそうさまでした。
食後にトイレに行ったけどほとんど出なかったのをみて、かなりの水分不足になっていたことを自覚した。
ボトルに冷水を貰って出発、ブルベに復帰。(12:20-12:50)

渋川の街中を抜けてまもなくPC1に到着。

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ここではレシートチェックだけの買い物をして出発。出掛けにMさんが入ってこられたので
「(フレームにつけた)補給食使われました〜?」と訊ねると
「(向い風で)そんなヒマないわ〜」だって。

▽三国峠 1000m越え

PC1を出て右折し川を渡ると、ここから1000m超の三国峠を越える山岳コースに突入する。
1000キロだから1000m、わかりやすい設定だ(違)。
ともかく今回の文字通り山場が早くも登場する。一気に1000m上るのではなくて二つ峠を越えてそれから標高1080mの三国峠だ(ということは1000mよりもっとたくさん登るってことでもある)。

実は1000m級の山を登るのはブルベや普段のサイクリング中では初めて、乗鞍と伊吹山のヒルクライムで登ったことしかない。ただ4月の名古屋600では900mを登っているのでまぁ大差ないだろうかと。

最初の中山峠までの半分くらいが激坂というほどでもないが平均勾配7%ほどありなかなか厳しい。最初はセンターロー39x25で行っていたがすぐにインナーに落とし30x21で回転を上げて登る。この方が楽で速いのは今年の乗鞍で経験したことだ。ギアを取っておくことに意味なんかない。
二ヶ所ほど短い平坦区間を経て峠を越えて一旦下り、次は赤根峠を登る。こちらはさっきより距離は短いけど勾配は平均7%ほどと同程度。
しかしここで早くも脚が売り切れた!左脚太腿裏にケイレンの予兆が。ギアをインナーローに落とし7km/h前後で負荷をかけずにしかし脚を停めずに回す。心拍は130を切っているくらいになった。これだけゆっくりだと風も心地よく感じるから現金なものだ。
なんとか頂上のトンネルを越えて下りにかかる。ここまで標高は750mほどだが一旦400m近くまで下りる。

しばらくは川沿いにほんの少し登る緩い勾配で20km/h程度で進み、赤谷湖の前で坂にかかる。ここから三国峠まで登りっぱなしになるのだがちょうどいい具合にここにローソンがあり休憩にぴったし。
同じくここで休んでいる人と雑談、昔玉野にいたことがあるとか、へぇ〜。その頃はブルベはやってなかったので早島ブルベを走ったことはないそう。(15:26-15:39)

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少し日が傾きかけた赤谷湖を見たら峠に出発。
ここからは距離はあるものの先ほどの峠より緩い勾配で、心拍も150前後で落ち着いて登れる。
コーナーには道路の半径を示すと共にNo.が示してあるので、頂上まであとどれくらいかそれを見るとわかる。

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この区間では脚が攣ることなく無事に登り切れた。既にGPSの予定からは10分以上遅れているがなにこの程度ならどうということはない。
トンネル前で停車して休んでいたのはブルベ参加者ではなかった。にしてもフラットペダルのGIANTクロスバイクはすごいですお疲れさん!

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トンネルを抜けてダウンヒル。
途中登り返しもあるが下りは下り、雨でないのでペースアップは可能。しかしまだ向い風のおかげでペダルを止めているとスピードは上がらない。負担がかからない程度に薄く漕ぎを入れて登りで遅れた時間を少しずつ少しずつ取り戻していく。

▼道の駅おぢや

既に日も暮れてナイトランに入った頃にセブンイレブンで補給。(18:04-18:17)

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小腹が空いていたのでおにぎりを一つ補給して出発。
実は当初の予定では晩飯にこの近くにある「レストラン雪国」に寄るはずだった。しかしこの手の店では料理が出てくるまでに時間がかかりそうで時間的貯金が無い今は苦しいと判断、この後の道の駅で夕食を摂ることに変更したのである。
(あとで聞くとここでは料理もすぐ出てきたしとてもおいしかったとのこと。)

このあとは平坦基調なので楽なはず、あとは向い風が問題か...
と、向い風が収まってきた。というかむしろ追い風気味か。夜の道を快適に走行、今日はじめて楽しいと感じられた時がやって来た。

道の駅おぢやに19:52到着。
普通道の駅のレストランは5時くらいで閉まってしまうのであるが、ここはもっと遅くまでやっている。温泉施設が併設されているからだ。ここで温泉に浸かる余裕はさすがに今日はない(苦笑)。
名物の「へぎそば」と飲み放題ドリンクバーもついでに注文。水分補給を十二分に。

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少し待って出てきたへぎそば、二人前。へぎそばは二人前からしかないので二人前なのである。

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”蕎麦だから二人前くらいがちょうどいいわ”と思っていたら結構な量で大満腹。
布海苔をつなぎに使った独特の風味を存分に堪能しました。ごちそうさま。(19:52-20:21)
時間を取られた様な気がしたが30分かかっておらず、夕食予定の40分から10分ばかし戻す事もできた。

▽PC2 祭りの夜

大きなお腹を抱えてさっきよりペースは若干落としつつ走行、ほどなくゆば〜ばさんと再会し一緒に走行。
左手に花火が上がっているのが見えて歓声を上げる。連発ではないが花びらの形をしたものなどかなり凝ったものについ見とれてしまう。しかも一ヶ所で上げているのではなくてしばらく左手に見えていたからかなり広範囲にやっていた様だ。
空は雲の切れ目から星がまたたき、左手には花火。追い風基調で快適な道。これぞブルベの醍醐味!銀河サイクリングの夜をとことん楽しもう。

腹がこなれてきた頃にPC2に到着したら、そこからも最後の花火が見えていた。
ここはスタッフによる通過チェック。腹ポさん達は1時間以上前にチェックしてるらしい、まぁそんなとこだろうけどその時間ならレストラン雪国をパスしたのだろうと思っていた。(21:09-20)

ここに着く前に出会ったMTBの走者、そのバイクを撮影させてもらう。
スリックタイヤ履いているとはいえ1000キロでもFサスMTBで走るとは!しかも後輪にはMonkey Lightがついている!
停車してる状態ではただ赤い光の線が写っているだけだが走行中は様々な模様が描かれてとても綺麗。

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PC2を出てまもなく、どこかの街中に入ると歩行者の交通整理をしているガードマンが目に入る。と、そこからの商店街にはたくさんの人が歩いていてアーケードには行灯がいっぱい飾られていた。お祭りの夜だった。

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”ある意味僕らもお祭りだな”
とほくそ笑みながら色とりどりにきらめく灯りの中を駆け抜ける。

セーブオンで補給休憩(22:40-22:50)。

そのうち後ろからペースの速い小列車が追い越して行く。信号で追いついたので後ろにつかせてもらうことにして30km/hを少し上回るくらいで快走。

涼しい!速い!楽しい!

日中の向い風の仇を取った気分だ。登りて攣ったことなどなかったかの様に脚は回る。

▽PC3〜新潟泊

そうしてPC3に到着した。(23:50-23:59)
ここからは新潟駅前のビジネスホテルまであとちょっと。ゆば〜ばさんは特に睡眠休憩は取らずに先へ進む為ここでもう少し休んでいくとのことでお先に出発。

・・・で、いきなり反対方向へ進んでしまい無駄に12分ほど走ってPC3へ戻り返し、ビジネスホテル到着は結局0:41になってしまった。
どうせなら0時以降は割安3150円プランがあったのでそれで予約しておくべきだったかなぁと今は思う。あわよくば11時半頃到着しようという読みはかなり甘かった。

ユニットバスで汗を流している間にコインランドリーで洗濯、布団に潜ったのは1時半頃だろうか。明日の風が読めないのでやや早めに5時出発とするが、疲れが激しく体が興奮していて落ち着かず、眠りに落ち切れない...

(本日の走行:344km)

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つづく