銀河サイクリングの夜 − 序夜

◆ 前 書 き 

ブルベ”はフランス語で“認定”の意味です。規定の距離を規定時間内に走るなどの基準をクリアすると認定されるもので、ランドネをスポーツとして楽しむブルベはフランスを中心に広く根付いています。認定をするための世界標準の規則に基づいたランドネ走行会をBRM(BRMのページ参照)と呼びます。しばしば「ブルベ」という言葉は走行会そのものを指す言葉としても使われます。

“ランドネ”はフランス語でトレッキングやハイキングの意味です。自転車に対して使われる場合、無サポートで長距離を走る耐久サイクリングを指します。ランドネはレースではなく、各参加者が自己のリスク管理の元に補給や機材の修理などを自力で解決し完走を目指す、自転車スポーツ発祥からの伝統のあるサイクリング形式です。 (以上、AudaxJapanサイトより引用)


今年4月に雨の名古屋600キロブルベを走破、7月に近畿400キロを走り今年のSRのノルマはクリアしていました。あの600は今思い出しても苛酷だった、雨が降ってなくてもあの山岳コースにはしびれました。それだけに二度目の600であったけど、昨年の近畿600より一歩レベルの進んだ達成感が後からじわじわ沸いてくるようでした。

600まではそれぞれの地域のブルベ主催クラブでほぼ行われています。
その上に1000という距離カテゴリがありますが、距離が長いとスタッフも尋常なく大変だからそれは一年に一度か二度どこかで行われるだけ。世界各国で行われているブルベでも1000は行われていない国もあると聞きます。今年はオダックス埼玉が1000を主催するらしい。1000キロ、どんなもん?

4月に600を走ることを選んだのは既に9月の1000が気になっていたからでした。
1000を行くなら今年も600は走っておくべきだろうと考えますと、近畿600は9月の第2週で埼玉1000の一週間前、それに参加したら翌週に1000はあり得ません。であれば近畿の次に地理的に近い名古屋でということで選んでみました。山岳と雨で遅れがちな走行になったものの、ゴールして脚はまだ死んでないことがわかった時点で、1000への扉を開いてみようと思っていたのです。 600までを一年で走ると、Super Randonneur略してSRという”称号”を得られます。それの更に一つ上の1000キロを走る意味は、4年に一度のブルベ最高峰パリ−ブレスト−パリ(PBP)1200キロを走るため。 資格上はPBP開催年にSRを取ればOKなのですが、600キロ完走して1200キロ走れるかというとそうは考えられないのが普通でしょう。1000キロというのは通過点、試金石なのです、PBPを狙う多くの参加者にとっては。

しかしながらPBPへ参加するには金銭的に障壁が高くそれでたぶん無理なのです。
でも手が届かなくても、そこへ近づいてみたいという欲求を持って、今回の1000キロに挑むことにしました。そう、これは挑戦です。走れるかどうかわからない不安を久々に思いだし、同時に期待も膨らんで、自転車のチカラを再び試すときを迎えました。

   さあ行こうママヤマ! 銀河サイクリングの夜へ

 

 − 本  編 −  

▽遠征
埼玉の浦和スタートでゴールが福島のいわきと大きく離れている事、そもそも遠いので移動にクルマという選択肢はなく新幹線輪行することとした。思えばブルベに輪行で行くのも初めて。
切符の手配をさっさとしておけばよかったものの、ゆっくりしていたら往復26000円の割安な早特キップの帰りの新幹線指定席の時間が実際乗れない早い時間しか取れず実質自由席となり、いきなり帰路の不安種をかかえてしまった。
荷物はドイターのデイパックに収める。 その中にはオルトリーブのサドルバッグも入れた。着替え類で一杯のサドルバッグはそれなりに重く、輪行袋をできるだけ軽くしたかったからである。出発直前のママヤマにそれがないのはそういうこと。

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家を出てすぐ忘れ物に気づいて戻る。アソスのシャーミークリームを小分けしたもの。これまでの600では使うことはなかったが、今回は使うかも知れないから持って行こう。

倉敷駅まで少しの距離なのでロードシューズはデイパックの中にしまいこみ、いつもの”親方寅さん”でそのままペダルを踏む。意外に素直に漕げる。 岡山でのぞみに乗換え、そのまま東京へ。お供に連れてきたiPodshuffleでゴキゲンな旅路。

▽さいたまポタ
京浜東北に乗換えて赤羽で降りた。そこまでが乗車券の”東京都区内”エリアだったから。ホテルのある蕨駅まではあと3つほどだし。

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埼玉は23年振りか。就職して新人研修で埼玉の谷塚にある会社の寮に一ヶ月いた時以来だ。あの時は3月だったし草加煎餅を焼く香ばしい匂いもしないし、再訪という感覚はない。

輪行を解いて走り出したのはなぜか反対方向、板橋という地名が見えたから。確か板橋には一度お世話になったあのお宅が...。見覚えのある区役所前にやってきたもののそこからどう行ったか道を全く思い出せず、電話メモ帳にもその方の連絡先が未記載で手の打ち様がなくなった。

しかたなく、そのまま戻るのはなんだか癪なので「大勝軒」の文字に釣られてこちらへ。

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ちょっと甘めのスープにやや太めのつけ麺。 ボリューム満点でなかなかおいしかった。同じ大勝軒の息がかかった(既に閉店してしまったが)岡山のカロリーの方が麺の活きが良かったな。
でも炭水化物しっかり摂ってそれは良し。

赤羽に戻り、今度は蕨駅前に行き、ホテルにチェックイン。
荷物を置いて温泉のチケットをフロントで貰って、明日のスタート地点のチェックに出発。GPSのルートナビだと4.5kmほどのはず。20分ほどで到着。

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写真を撮っているとクルマで下見に来ていた同じ参加者に声をかけていただきご挨拶。 帰りはもっと走りやすい道がないかとウロウロするものの結局よけいに無駄足使っただけ。
なんだか結構距離を走ってしまい、温泉に入るにはちょうどいい頃合いとなった。

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なかなかいいお湯でした。これで輪行と試走の疲れも流してこれたかと。 ホテルに戻る頃はもう真っ暗で今日からナイトラン開始。駅の反対側にあったMaxvaluに寄って夜食やら朝食やら電池など購入。
自転車はホテル内に入れさせていただき、再びさっとシャワー浴びておやつをつまみながら明日のウエアの確認を済ませ、10時半頃ベッドに潜り込んだ。 明日は5時過ぎに起きよう。

▼走行計画

ここで改めて今回の走行にあたっての計画と準備について。

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1000キロの道のりを走りきるために仮眠ポイントの選定からまず始めた。
コース上には健康ランドが点在しており、というより健康ランドをうまくつないだコースレイアウトを考えてあるといってもいい、主催者側の親心を感じるところ。

初日は1000mのヒルクライムを含む山場でもあるし、PC3直後の新潟の健康ランド(333km)が最適ポイントであろう。もっともここには参加者が大勢集まるだろうし、そもそも連休で一般客も多いという見込みから新潟駅前にビジネスホテルを予約しておいた。健康ランドより高くついてしまうがそれでも3500円。

二日目は秋田の大仙市大曲の健康ランド(638km)か岩手の北上(719km)の健康ランド。北上の健康ランドは入館が午前1時までという制限がある。ここまで来られれば翌日は楽になるのだが、1時まで、入浴しようと思えば0時30分までに入館というのはハードなスケジュールになりそう。目安は大曲到着時刻でここに20時より前に到着していなければ北上へは届かないとして、大曲で宿泊という案を第一に次点で北上という案にしておく。

三日目、大曲泊なら夜明け前に出発、北上泊なら7時過ぎに出ればいい。PC6を過ぎればPCの制限時間はぐっとゆるくなるのでここからは急ぐ必要はない。
観光ポイントとして中尊寺、松島を想定、夕食&温泉を亘理(わたり:880km)で取ってもゴールは午前2?4時頃と70時間を切ることになりそうだ。早くゴールしてもどのみち翌朝でないと電車は来ないので健康ランドにいるのは一緒だから、余裕を持って走行を楽しむつもり。

装備面では今回はいわゆるドロップバッグを採用せず持てる荷物だけで済まそうという計画。
それは着替えをあまり持って行かないということであるが、途中コインランドリーで洗濯してしまおうというわけ。少なくとも最初の新潟のビジネスホテルでは洗えるだろう。
ジャージは薄手長袖のWizard4シーズンのみ。昨年の近畿400,600を走ったもの。
防寒として冬用インナーを半袖と長袖の2枚、それにウィンドブレーカ。雨具は直前の予報からほぼ心配ないので軽量な100均カッパで済ませる。輪行袋は持って行く予定にしていたが、モンベルのものは付属のストラップだけ持っていれば現地でゴミ袋等入手しさえすれば輪行できるとべりさんから聞いてそのようにした。輪行袋本体がなくなるだけでも容積的に結構助かった。

補給食は途中で買い足しが出来るので少しだけ。いつもの自家製梅干しは多めに持っておく。ボトルはPOLAR(大)1本。

直前に使えなくしてしまったGPS、ヤフオクで現行品(といっても既に前世代)eTrex LegendHCxを手に入れた。センサがかしこくなっていることよりも、ウエイポイント登録数が500から1000になったのがありがたいことなのだ。
ルートを4つに分けてそれぞれのウエイポイント名が通過予定時刻+距離にしているのは今まで通り、おおよそ1〜2kmおきに現在時刻と比べるとペースがわかる。しかし液晶画面がVentureCxより見にくくなっているのには閉口した。 (つづく)